第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾
火事場の馬鹿力、恐いもの知らず、気の迷い………何とでも呼ぶがいい。
そういった、その場の力が生死を分ける事とてある。
何よりも、今の彼岸花には何か予感があった。
今なら、何かが掴める。
きっと、その掴んだものは彼岸花の悩みすべてを解決してくれるような魔法じゃないのだろう。
けれども、今を勝利で乗りきることが出来たならば。
未来はきっと、彼岸花にも他も皆にも、光をくれるはずだからーーー。
刀を構える手が、少しだけ震えている。
恐いのか。
挑戦は、何時だって恐いものだけれども、それを踏み越えていかなければならない。
気持ちの問題だと言うのならば、覚悟は今、出来たところだ。
「ーーーてやあああああぁぁぁ!!」
踏み込んで、刀を縦に一閃。当たったならば、調度、三日月の右腕の肘から先を貰える位置。
それをかわされたので、そのままもう一度踏み込んで斬りかかる。
「何度やっても同じだ。勝てないものは、勝てない。力量の違いもわからぬようじゃ、俺には勝てんな」
彼岸花の一撃を受け止めた三日月は、そのまま彼岸花本体を弾き飛ばした。
刀が彼岸花の手から飛ばされて、壁に刺さった。
「よく言うよ。一番最初は負けたくせに」
「あれとて、お前だけの力じゃない。獅子王が居たから、俺はそっちに気をとられていただけだ。」
「さいですか。ならば、今度は私に気をとられてもらおうか。」
「刀もない身で、よくそんなことが言えるなっ!」
三日月が刀をふり下ろしてくる。
瞬時に、彼岸花は鞘を前に突き出した。
「!!」
「………………………使えるものならば何でも使う。当たり前だよね」
真剣な顔でそう言った彼岸花は、三日月の刀を弾き、足払いをかけた。
「ッ、小癪な真似を」
手をついて、倒れる寸前に体勢を建て直した三日月。
彼はそのまま片手で刀を横に払い、彼岸花が足でしたことを刀でしようとした。
「甘いわっ!」
その場で軽く跳んだ彼岸花。
三日月の刀の上に着地する。
すると、力任せに振り上げられたので、避けることも出来ずに宙を舞う。
宙を吹っ飛ばされている間に、三日月が立ち上がるが見えた。
彼としては、そのまま地面に落ちるであろう彼岸花を狙うのが得策なのだろうが、彼岸花にも策があった。