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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾


「来たか。」
三日月が、振り返る。
彼岸花は、腰に手を当てて、刀が無いことに気がついた。
三日月の腰には刀がある。
「…………………………まぁ、先ずは三日ぶりですね」
「そうだな。お前が、俺の顔を蹴った時以来か」
「馬鹿なことを言うなや。お前が、あいつを殺そうとしたとき以来だよ。」
「……………………」
「……………………」
「………それもそうか。」
三日月は言って、笑った。
彼岸花は、その顔を見て、呟く。
「もう、戻ってくる気はないの?」
「ない。」
たった一言であった。無駄な前置きも、言い訳も、迷いもない。
「…………………………わかったよ。」
彼岸花は彼岸花なりに頷いた。
そして、刀はないので身体全体で構える。
「それなら、無理矢理つれ戻す」
「……………」
「逃げは許されない。参る!」
三日月が、笑って刀を構えた。


「どえりゃああああ!!」
「っふ、はは!なぁ、小娘。不思議なものだな」
何度か問答が続いた所で、三日月が呟いた。
「不思議、ねぇ。まぁ、確かにこの状況は不思議だ」
「そうだろう。そして、俺はな、ここに来てからずっと不思議だったんだ。」
三日月の刀が横に切る形で、脇腹に入ってくる。それを彼岸花は反対側に跳んでから、床を転がって避けた。
直ぐに起き上がって、三日月へと再び構える。
「不思議?」
「何故もっと早く、あの忌々しい人の子を殺さなかったのかと」
三日月はその目に僅かに禍々しい色を宿して、不思議の内容を言ってくれた。
彼岸花は、それを聞いて軽くため息をついて見せる。
「なんだ?」
「いいや。ずいぶんと簡単なことで悩んでらっしゃるなと。」
「ほう、なら、お前には答えが解るのか」
「嫌いになれなかったんだよ。いや、もっとはっきり言おうか」

「お前は、審神者…………恵の事が好きだったんだよ」

もちろん、恋愛ではないだろう。………否、それすら答えは定かじゃない。本当の答えは、三日月の中にしかないものだ。
「好き?俺が………………まさか。」
嘲笑する三日月。
「皆、そうなんだよ。結局、今だって嫌いになんてなりきれないんだ。」
ぎゅっと、心臓を掴むように、彼岸花は胸の辺りの着物を握りしめた。
「一度、優しくされたら。…不器用でも愛してもらったら、それを忘れることなんて、出来やしない」
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