第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾
「夢に入る方法
最近、一部の刀剣達が悪夢に魘されているらしい。そこで、現在の実験と平行させて夢の研究も始めることにした。
刀剣達は、元が魂なだけあり、夢といっても普通とは一味違う。
この間、面白いことを実験の合間に耳にした。なんでも、夢が繋がっていた者が居たらしい。大倶利伽羅と燭台切だ。
大倶利伽羅と燭台切の二人は同じ主の元にいただけあり、夢が繋がるという事は今までにも何度かあったらしい。
ここで私は、ふとあることを思い付いた。
もし、己の意思で他者の夢に入る、または干渉する事ができれば、私の本来の実験としても悪いことではないんじゃないか、と。
そんなわけで、動機は中途半端であるが、私は他者の夢に干渉する方法を探し始めた。
結論から言うと、他者の夢に干渉する等という離れ業は、人には無理であった。
しかし、刀剣なら、可能性があることもわかった。
夢というのは、ようは体を休ませるための睡眠時間において、魂が見る景色のことだ。
つまり、夢に干渉するということは相手の魂、世界に干渉するということなのである。
なので、元が魂である刀剣なら、相手に対する感情次第で成功することがわかった。
感情は、決して不純なものではいけない。心から相手の思考を理解した上で、相手の世界にはいる覚悟を持てばよいのである。
結論は呆気ないものとなったが、この研究はここでやめにする。
本来の実験の成功が見えつつあるのだ。
だから……………………………」
「いや、結局精神論かい!」
豪快に空気へと腕を叩き込んで彼岸花は叫ぶ。
感想は一言につきた。だって、何一つ解決していないと同じことなんだもの。
「ふーむ、相手の世界にはいる覚悟か。難しいね、今回の場合だと特にそうだ。」
「何か、別に方法はないのでしょうか」
「あるかもしれないが、探すのは困難だね。わざわざこうして纏めているということは、ここにある本の内容を全て知った者が、こう結論をくだしたことになる。」
「………確かに、それはそうですね。」
難しい話を始めた二人の会話を聞きながら、彼岸花も現在のピンチについて考えていた。
精神論は嫌いじゃないが、出来ればそれは最後の手段としておきたいのが人の性。それは、刀剣とて同じこと。
(参ったなぁ)
彼岸花は室内をぐるっと見回して、ため息。