第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾
彼岸花が突っ込み石切丸が腕を組んだ所で、二人は太郎太刀の救出に乗り出した。
「………………………………な、何とかなったから良かったものの、気をつけてください」
彼岸花は若干肩を落としながら言った。
「すみません。」
そう言いながら倉に入る太郎太刀が、入り口に額をぶつけたのを、彼岸花は恐らくこの先忘れることはない。
「それで、地下室というのは何処にあるんだい?」
石切丸の言葉に彼岸花は床を指差した。
「あの床を持ち上げるとあります。」
「本格的ですね」
「まぁ、取り扱ってる本が本ですから」
彼岸花が怒りをにじませて言うと、石切丸と太郎太刀が顔を見合わせた。
大男二人引き連れた彼岸花は、床を持ち上げて現れた梯子をおりた。
そして、室内をぐるっと見回しあの二人が普通に入れることを確認してから、上を見上げる。
(うん、高さもぎりぎり足りてるかな)
「入ってきても大丈夫そうですよ」
……………………だが、いくら待っても二人は下りてこようとはしなかった。
「?」
「あの、すみません。梯子を外してもらえませんか?」
「私達が使ったら最悪壊れてしまうかもしれないからね」
「あー、成る程。すみません、気が回らなくて」
梯子を外して壁に立て掛けると、太郎太刀、石切丸とおりてきた。
「これはこれは………圧巻、とまではいかないが結構な数があるね」
「そうですね。関係あるかは解らないんですけど、人体に関する本とかもありますよ」
「成る程。しかし、人体についてはそもそもの知識が少ないからね。」
「薬研殿を呼ぶべきでしょうか?」
太郎太刀の提案に石切丸はゆるく首を振って、
「今日のところは私達だけでやろう」
と言った。
そういうわけで、彼岸花達の調べものは始まった。
石切丸が話しかけてきたのは、彼岸花が例の神話本を前にしていたときであった。
「どうしたんです?」
「この本、妙な術で縛られているのだが、中を読む方法は無いのかな」
石切丸が持っていたのは前審神者のファイル。
「あー、これですか。これはなぁ」
「本体で切ってみましょうか」
「いや、流石にそれは………」
案外過激な太郎太刀に感心しながらも、彼岸花は止める。
赤い紐は中々に頑丈で、あの時は彼岸花も結局諦めたのだ。