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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾


「っよ、お元気?」
「………まぁまぁだな」
そう答えてニッ、と獅子王が笑った。
彼岸花は、現在手入れ部屋を訪れていた。
獅子王の手入れが終わったとの情報を入手したからである。
「これ、お見舞い」
「ん?あ、饅頭。いいのか?短刀にやるって言ってたのに」
「その短刀ちゃんたちからのお見舞いでもあるからね。気にしないで食べて。」
「そっか……………じゃあ、貰うとするか」
饅頭の小さな包みを開けて獅子王が、饅頭に食らいつく。
ぼんやり彼の犬歯を見ていると、やがてその表情が和らいで饅頭はあっという間に無くなっていった。
「美味しかった?」
聞いてみると、直ぐに
「滅茶苦茶うまい」
と返ってきた。
流石、政府が寄越すだけのことはある。まぁ、空腹だったというのも理由のひとつではあるだろうが。

少し間があいて、ふと獅子王が問いかけてきた。
「主は、大丈夫だったか?」
そわそわとした彼の様子を見る限り、ずっと気にしていたのだろう。
彼岸花は少し微笑んで頷く。
「そうか。………あー、良かった」
くしゃりと髪を撫で上げて獅子王が笑う。少年の様な笑顔に、彼岸花は嬉しくなった。
「……………ありがとう獅子王」
「なんだよ、急に」
「今しか言えないからね。この雰囲気のなかで言いたかったのさ」
彼岸花は適当に言って、もう一度、内心で礼を言った。
「なんだかね、これから急激に良くなっていきそうな感じがする。」
彼岸花はポツリとこぼした。
「これから?良くなるのはいいけどさ、何でこれからなんだ?」
「ふふふ、君のお陰だよ。君がね、守ってくれたから」
本当に、そのお陰だ。
「……………………そうか、俺、一応役には立てたんだな」
獅子王が外の方を見ながら言う。
その言葉に、彼岸花は膝立ちになって両手を広げた。
獅子王が何事かと彼岸花を見る。
そんな彼を、彼岸花は抱き締めた。
「!!??え、なっ………」
「ありがとう!獅子王!!」
彼岸花は叫ぶように言った。
「ちょ、声がでけぇよ!」
「いいんだよ、今だけは無礼講じゃい!獅子王!君のお陰で、何時も私は救われてきていたけど、今回のは大金星だ!」
本当に、ありがとう。
「君の優しさがね、人の心を救ったんだ。それはもっと、誇っても良いことなんだよ。」
その優しい心に、せめてもの表彰を。
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