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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾


「あの人の子を殺せば、もう俺達を縛るものは無くなる。さすれば、それで終わりだ。」
三日月の言葉の意味を、彼岸花は察してぎょっとした。
「……………まさか、闇落ちでもする気か?」
小娘を殺した後、待っているのは次の審神者。だが、それはないと言ったのだ。
つまり、それは………死を選ぶという解釈もあるがそうとは思えない。
彼岸花の問いに、三日月は何も答えず、笑った。
彼岸花は力一杯畳を踏みつけた。
「ふざけんなっ!そんなことをして、何かが楽になるとでも思ってんのか!!」
乱暴に叫ぶと、不意に刀に力が込められた。
そのままあっさりと力負けして彼岸花はひっくり返る。
「彼岸花!」
獅子王の声を聞きながら立ち上がり、三日月を睨む。
「娘。お前は愚かだ。愚かなほど真っ直ぐすぎる」
三日月の目は、何処か悲しそうであった。
「悲しいものだな。お前をみていると、昔の俺を思い出すよ」
「………はぁ?昔とは」
彼岸花は意味を理解しかねて思わず聞いていた。
「昔の………そこの人の子を慕っていた頃の俺だ」
「!!」
小娘が目を丸くする。
「思えば、愚かなことだった。………だが、それはもう昔の話。あの頃の俺も、あの頃の主も、もう、居ない。」
三日月が刀を振り上げた。
「彼岸花様!」
こんのすけが彼岸花の前に躍り出る。
彼岸花は、その瞬間、刀を振り捨てた。
真っ直ぐに下りてくる三日月宗近をーーー両手で取った。
「!」
三日月が驚く。
真剣白羽取り、人はこの技をそう呼ぶ。
(やった!成功した!!)
「居ない?嘘だな、そんなこと。」
「っな、にを………!」
「居るに決まってる。そういう頃の自分っていうのはさ、簡単には居なくなったりしないんだよ」
彼岸花は言って、三日月と視線を通わせた。

「居ないふりしたって、ずっといるんだ。どうか、殺さないであげて」

囁くように言って、彼岸花は足を振り上げた。
瞬間、場の空気が凍りつく。
「なっ」
「………やりやがった」
「う、嘘」
場違いな上記の台詞は、宗三、獅子王、大和守、のものだ。この場に居合わせていた刀である。
状況を一言で説明するのなら…………彼岸花は、三日月宗近の顎に蹴りをいれたのである。
「三日月!」
誰かの叫びと共に、三日月が倒れた。
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