第3章 第二章 変化を求める、カメレオン
裏話
障子を開ける音に、室内全員の視線が入ってきた人物へと向けられた。
「あぁ、一期一振。遅かったね」
歌仙兼定が心配した様子で話しかけると、一期一振が申し訳なさそうに頭を下げた。
「歌仙殿。申し訳ない。少々弟たちを見送るのに時間がかかりまして。」
「ふむ。まぁ、無事見送れたのだろう?」
「えぇ。行ってくれました。後は、無事に帰ってきてくれると良いのですが」
目を伏せ祈るように呟く。その様子は随分と気を張っている様で、また、同時にどこか不機嫌そうにも見えた。
「………何だか、不機嫌そうだね?どうかしたのかい。折角あの新入りが変わってくれたというのに」
「それが逆に心配なんだろ」
歌仙の言葉に答えたのは一期ではない。
急に話に割って入ってきた同田貫正国だ。
珍しい面子になったな。そう思いつつ、歌仙は尚も話を続ける同田貫の言葉に耳を傾けた。
「あの女。なに考えてやがる………意図が全くよめねぇ。」
「君がそこまで考えるなんて珍しい。」
「後から何かされるのも癪だからな。先に潰せるのならそれに越したことはねぇだろ」
同田貫の目が細くなったのを見て、歌仙はため息をついた。
「その時は手伝うよ。………それで、一期一振君は何に対して不機嫌なんだい?」
「だから、あの女が弟たちと出陣したことだろ」
「それもありますが………」
「が?」
うやむやな態度は許さんとばかりに歌仙が返せば、一期も覚悟を決めたようで口を開いた。
「あの方、主の前でわざわざ弟たちを庇うような発言をして………もしあの時、主の目が弟たちに向いていたら…………」
「あぁ、成る程ね。確かに、あれは無神経だ。君が毎回どんな思いで耐えているのかも知らずに」
歌仙が、同意すれば、一期も深く頷いた。
「ま、どっち道もう帰っては来ねぇよ。あの女、一度も戦場に出てねぇんだろ?だったら、もう結果は解りきってる。」
「いや、もしかしたら敵に会った瞬間逃げ帰ってくるかもしれない。」
「その時は、もう俺達が指をくわえる必要もねえだろ。ーーー折ってやればいい」
「それもそうだね。どっちに転んでも、今日が彼女の命日だ。」
「また、新たな奴に目をつけたか」
門の前にて娘を待つこんのすけに話しかける。
「三日月宗近………」
「俺達はあの娘を良いとは思っておらぬぞ」
「それは、あの方の心を知らないからです」
「会って一日の奴が何を言うか」