第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾
「…………………………………………………」
彼岸花は立ち尽くしていた。
立ち尽くして、何を言うか考えていた。
どれくらいこうしていたのか。もう解らない。
答えを探して、見つけようとして、必死だった。
何もかもがおかしいのに、何をおかしいと言えばいいのかが解らない。
頭の中で言葉が絡み合って、皆の顔が浮かんでは消えて。
私は、どうしたいのだろうか。
問いかけてみる。
助けたい。何とか、この本丸を建て直したい。
どうしてそう思う?媚びでも売りたいのだろうか。
カッコつけたいだけなのだろうか。
……………………………………………。
知るか。
助けたい。この本丸を。あの優しい刀達を。あの、馬鹿な小娘を。
助けて、みたいんだ。
それに、
「理由が必要なの?おかしいことをおかしいと言うのが、そんなに馬鹿げてるのかよ。なぁ!」
誰もいないのに叫んだ。
困っている誰かに腕を伸ばすことすら出来ないのなら、黙って己の首でも絞めてろ。
彼岸花は、走り出した。
襖を閉めることすら忘れて、彼岸花は真っ直ぐにその場所を目指す。
本丸の中を走って、道場の扉を開け放った。
「!!」
中にいた刀剣達が彼岸花を見る。
彼岸花は、声にならない叫び全部を抑えて、数々の刀剣達の一人に、言った。
「演練で負けたことなんて、気にすんな」
「………………え」
唖然とする燭台切を置いて、彼岸花は続ける。
「負けなんて、誰にだってあるだろ。そんなこと、誰のせいでもない。」
当たり前のことだけを言う。
「もし、それで誰かが小娘に八つ当たりされたとしても、悪いのは負けたことじゃない。君のせいじゃない。」
私は、馬鹿だ。
そう。そうだとも。
「私は、この本丸を建て直すんだ。宣戦布告だよ、馬鹿野郎!」
考えた答えの、答えは出ていない。だけど、言いたいことはできた。
「彼岸花を嘗めるんじゃねぇ!私は、私のためにやるんだ!!」
叫んで、道場内を見回す。
数名、居ないものがいた。よく知っているものも居ない。
(小娘の部屋か)
グッと口を引き結んで、踵を返す。
そして、彼岸花は走り出した。
廊下を走って、小娘の部屋を目指す。
そんな彼岸花と、小娘の部屋より出てきたこんのすけがぶつかったのは間もなくの事であった。
「彼岸花様!!」