第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾
話は移り、饅頭のことになった。
「十五個か………短刀を優先して食わせてやるべきだろ」
獅子王の言葉に全員が賛同したことで、饅頭は後で一期に預けることとなった。
「そういえば、あんたたち野菜を育ててるんだって?収穫は何時くらい?何だったら手伝うわよ」
太郎太刀の横でゆったりと構えていた次郎太刀が、そう言ってくれる。彼岸花は有り難いなと思いつつ、もうそろそろだと答えた。
「楽しみだねー、野菜。」
「なんだ、お前は野菜も育てておったのか」
唐突に入ってくる声。
「あ、岩融さんと今剣くん。」
襖が開かれた先に、岩融と今剣がいた。
「邪魔するぞ」
「はなしをききにきました」
そう言うと、今剣はふわりと岩融の腕から降りた。
その降りかたが綺麗で、彼岸花は本当に天狗みたいだとポツリ思った。
「政府はどうであった」
「いやー、何もかもが高そうでした。あの建物作るのにどれだけのお金が使われてるんでしょうね」
「……………言ってはおくが、そんなことが知りたいのではないぞ」
「はははっ。あ、今剣くんお饅頭食べる?」
彼岸花は短刀である今剣に饅頭を一つ渡した。
「え、いいんですか?」
「もちのろんよ。お腹すいてるでしょ。ごめんねー、もうすぐ野菜が収穫できるから。」
彼岸花は笑い半分で言うが、今剣は笑わなかった。
ジッと饅頭を見つめたまま、彼は座ることもしない。
「どうした。毒なんか入っとらんぞ」
岩融の真似をして言ってみるが、岩融に睨まれただけで今剣からの反応はなし。
「……………」
やがて彼は、饅頭を宝物のように両手で包み込んで笑った。
「ありがとうございます。ぜったいに、このかりはかえします」
「え、笑顔と反比例して言葉が可愛くない………!!」
君はやーさんか。
突っ込もうかと思ったが、やーさんを理解してもらえるとは思えず結局言えなかった。
「よ、喜んでいるのならいいんだけど……………悪くなる前に食べなさいね?」
何だが、宝物のように持たれているのを見ると取っておかれそうで恐い。
「それで、主の過去とやらはわかったのか」
「あー、それ俺も気になる。」
岩融、獅子王と聞かれて彼岸花は考えた。
「結構壮絶なんだけど、聞く?ざまぁ見ろ、みたいな反応しか出来そうにないなら話さないよ」
彼岸花の言葉に、数名考えるような表情をした。