第8章 第七章 饅頭ならばつぶ餡派、咲くのなら花の下
「………謝ってもいいですか」
「何について」
彼岸花は聞いた。男は少し間を置いてから答える。
「貴方のことについて。」
「………謝られるような事なんてないよ。全部、私が選んだことだから」
そうだ。誰のことも恨んでないし、怒ってもいない。
それでいい。
「……………すみませんでした」
男は言った。
彼岸花は、何も言わなかった。
「あ、申し訳ないと思うのなら一つお願いをきいてくださいよ」
「………あまり無茶を言わないでくださいね」
「うん。あのさ、もう少ししたら食料を送ってくれない?」
「……………自給自足が出来ているから支給は無くていいと審神者が…」
「嘘に決まってんだろ。この間丁度野菜を植えて、もうすぐ収穫ができるところだわ」
彼岸花は若干怒りながら言った。
「そうでしたか。解りました。なら、送らせていただきます」
「うん。調味料も頼むよ」
「はいはい」
適当に返事をしつつも、男はきちんとそれを手帳にメモしていた。
「というか、支給とかあるんやね。政府の資金って何処から来てるの?」
「何だかんだでうちも大きな組織ですからね。いろんな国や組織とは繋がっているんですよ」
「外国には歴史修正主義者って出ないの?」
何となく気になったことを尋ねてみる。
「今のところ報告はありませんね。まぁ、この先どうなるかは解りませんが」
男は眉一つ動かさずに言った。
きっと普段から、そういったことを考えているのだろう。
「……………訂正するよ。案外、眼鏡も嫌いじゃない。」
「わざわざ言うことですか」
「じゃあ、帰る。バイバイ」
「はい。さようなら」
男が軽く手を振ってくれたので、それに応じながら彼岸花は政府を出た。
本丸へと帰還するゲートの前で、一度政府を振り返る。
久々に来た政府。彼岸花にとっては第二の故郷。
また、来れるだろうか。
「…………………なんてなー」
バカな妄言はよして、彼岸花はゲートを潜った。
事件が起こったのはその、夜のことであった。
「三日月宗近が、審神者様を殺害しようとしました!」
こんのすけの叫びで、彼岸花は立ち上がる。
全ては、もう少し先の話。