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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第3章 第二章 変化を求める、カメレオン


そして、彼は昨日小娘に殴られていた子でもある。
俯いている彼の表情は窺えないが、服の間から覗く肌には傷が浮かんでいた。
手当てをされていないのか、待っている最中なのか。解らないが、彼は出陣出来るような状態にはとても見えない。
(冗談じゃなく死刑宣告なのか)
こんな小さい子が。
(…………………よし)
覚悟を決めるときだ。彼岸花は右手を高らかに挙げた。

「意義あり!!待ちやがれ、小娘!!」

座敷内の空気が凍りつく。こんのすけも顔を驚愕の色に染めたまま固まった。
刀剣男子達の視線が再び彼岸花へと集まる。
彼岸花はたった一人、小娘の反応を待った。
「…………………………」
襖を開け、退出しようとしていた小娘が振り返る。
その顔に、座敷内にいる刀剣達の時間が止まった。
『殺される』
誰もがそう思った。
後に彼岸花はこの時の事をこう語る。
『私もそう思った』

「……………気安く声をかけんな。ゴミ」
「君こそ。もっと、私に敬意をはらいたまえ」
「はぁ?冗談は存在だけにしろよ。お前が喋るだけでもこっちは引いてんのに。更に何かを求めるつもりか」
「求めているのは、出陣許可だけだよ。………私を隊長にしろ」
この言葉には流石の小娘も驚いた様で、目を見開いている。
言うのなら今しかない。そう思った彼岸花は続けた。
「見る限り短刀の子達はとても出陣出来る状態じゃない。そんなの、誰が見たって解るだろ。傷だらけの子を出陣させるくらいなら、私に行かせろ。勝利くらいはてめぇにくれてやる。」
「……………………あんた」
怒鳴られる。少なくとも、彼岸花は覚悟をもう一度噛み締めた。
だが、
「阿津樫志山がどんな場所か知ってて言ってる?」
「?」
どういう意味だ?よく解らないが、間違えるわけにはいかない。彼岸花は頷いた。
「山でしょ」
「「………………………………」」
「え?違うんすか?」
ただの沈黙じゃない。奇妙な沈黙に彼岸花は答えを間違えたのかと焦った。
小娘を見ると、笑っている。
(笑っている!?)
初めて見る笑顔だが、気味が悪い。
何かよくない間違いを犯したのだと彼岸花が気付いたときには、もう遅かった。
「そうね、そこまでわかっているのなら、行かせてもいいわ。ただ、折れられても困るのよね」

「なら、遺書でも書きますよ」
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