第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
パラパラと胸糞悪いだけで面白味のない日記を読む。
日記の内容は代わり映えしないだけで、奴の人生もそんなものだったのだと思うと、冷たいものが込み上げてきた。
日記の終わりが見えた。彼岸花は、最後のページで手を止める。
『六月十×日
次郎太刀が首を吊って死んでいた。あぁ!何ということか!!折角、折角奴は成功しかけていたというのに!どいつもこいつも何故この研究の素晴らしさが解らないのか!!残る刀剣はあと数名。新たな刀剣を具現するのはまた骨がおれる。だが、まぁ、実験の成功が更に遠ざかった今、そんなことを言っている場合ではない。また、具現することにしよう。
私を見て、刀剣達は異常だという。だが、この研究の果てにあるものは、決して異常な絶望じゃない。
それに、これは、私の夢なのだ。
子供の頃から描き続けてきた、夢。死んでも、諦められないたったひとつの夢。
諦めるものか。永遠を手にいれるその日まで。私の、見たかった神を作る日まで。私は、諦めない』
日記は、この日で終わっていた。
夢を追いかけ続けた人間は、太郎太刀に、夢の果てに殺された。
末路を知った彼岸花に、この日記の全ては無意味だ。
彼岸花は、日記を閉じて、心に沸々とわく感情を持て余していた。
「おぞましい。何という諸行………祓いたまえ、清めたまえ。」
石切丸の言葉に、同意という他がなかった。
「出よう。ここには、何もなかったよ」
「何も……………?」
青江が聞いてくる。
彼岸花は頷いた。
「全部はもう、過去の産物だ。この部屋にあるものは全部、無機質なだけの思い出に過ぎやしない。」
「随分と饒舌じゃないか」
歌仙が言った。心配するように、探るように。
彼岸花は日記を机に置いて、その表紙を見つめる。
「夢を見るのはね、生きている人だけの特権なんだよ。」
死人に、その権利はない。
死んでも諦められない夢?言ってろ。
沢山の命をおとして尚、不幸の上で夢を見るのか。
彼岸花の唐突な言葉に、皆が困惑している。
彼岸花は続けた。
「帰ろう。帰ったところで地獄だろうけれど、ここは私達のいる地獄じゃない。夢の終わりだ。」
彼岸花の言葉に、皆は顔を見合わせた。
「まぁ、居ても仕方ないか」
獅子王が助け船を出してくれる。
その甲斐あって彼岸花達は帰ることになった。