第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
「本当に、いいんだね」
確認してくれる歌仙は本当に優しいと思う。
彼岸花は一度だけ振り返った。
いいんだね、と聞かれればいいはずだった。彼処に欲していた情報は何一つなかった訳であるし。自分でも………そう言ったのだし。
「結局、日記にめぼしい情報はなかったのですね」
一期一振が言う。
めぼしい情報、確かにそんなものは何一つとしてなかった。結局、奴の自己満足だけが言葉として存在しているだけの日記。
最低なやつだ。おぞましく、悪魔のように残酷で貪欲。
さっさと背を向けてしまえばいいのに。しかし彼岸花は立ち尽くしていた。
「………………………………無かったよ。何も、なかった。」
意味も恐怖も夢も。何一つ、ないのだ。
それでいい。それがいい。
彼岸花は人の怖さを、一つ、理解する。
夢を見るのは、生きている者だけらしい
彼岸花は、この日夢を思い出して、夢の果てを知った。
もしも、明日………夢を見るのなら。
その夢がどうか、人を幸福にするものであればいい。誰かを、生かす夢を、見せて。