第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
眠っていた………否、待っていたのだ。誰かがここを覗くのを。
彼岸花達が見たのは、部屋中に置かれたビーカーやカプセル、ケース。ガラス性の物もあれば、プラスチック性の物もある。
狭い入り口の正面に置かれた机。
その上には、密封されたガラスケースの中で薬品につけられた目玉が二つ浮いている。
光をただ反射するだけの塊である筈なのに、目玉はいまだギラギラと光を放っていた。
驚くべき事は、他にもある。
ビーカー等の中には全て、当たり前だとでも言うように肉体の一部が浮いていた事だ。
「……………………………そうか、本当の瘴気の出所はここだのか」
石切丸が呟いて、青江が部屋を見回す。
「ここは、何なんだろう」
その質問に彼岸花は答えるべきかどうか迷った。
「前の審神者の部屋だよ」答えはこうであるが、それを彼らに知らせる意味があるのだろうか。
彼岸花は考えて、止めた。
事実の共犯者である燭台切達を見たが、彼等も言うつもりはないらしい。
事実はいまだ隠蔽。それが結論である。
彼岸花は石切丸と、青江の目を抜いて部屋の中を漁り始めた。
「ちょっ、何してるの!?」
真面目な燭台切が又もや怒る中、彼岸花はこの家探しの訳を話した。
「いや、もしかすると仲間のことが知れるかもしれない」
普通に聞く分には何てことのない台詞。だが、その意味を知っている燭台切達はハッとした。
太郎太刀の仲間。それが誰を指しているのか。ヒントでもいい。何か、何かないものか。
探し続けて、彼岸花は一冊の本にたどりついた。
本を開く。一頁目に日付とその日の出来事。
直ぐにそれが、日記であることを理解した。
「何かあったのですか?」
一期の問いに、彼岸花は日記だと伝える。
日記に書かれていた事は、太郎太刀が言っていたことと大差なかった。
ただ、そこは流石加害者。被害者であった太郎太刀とは違いここに苦というものは何一つ書かれていなかった。
どうしようもない根っからの愚か者。
その評価が最もお似合いだ。
今剣の騒ぐ声が聞こえる。彼岸花は一旦顔をあげて振り返った。
「加州!加州……………!!」
室内を見回す今剣を岩融が励ましているのが見えた。
彼岸花は、解っていたとはいえ、心が痛むのを感じた。
その光景から目を逸らして、彼岸花はまた顔をおとす。