第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
扉の意味を考える野郎数名を置き去りにして真っ先に彼岸花がしたのは扉に耳を張り付けるという行為。
そして、彼岸花はダイヤルを回して気付いてしまったのだ。
こいつはいける、と。
そしてそのまま弄ること数分。
「ねぇ、やっぱりやめた方がいいんじゃないかな。そんな方法で開けても罪悪感が増すだけ………」
「私は全く後ろめたくないよ。」
「……………どうしよう。僕にはもう伝えられる言葉がないよ。」
燭台切の言葉も虚しく彼岸花のダイヤルを弄る手は止まらない。
「君、いい加減考え直したらどうだ。さっきから五分、待ってる僕らに対する説明もなし。」
「やることがないと暇だよな」
歌仙、獅子王と続いた言葉に、ついに彼岸花の手が止まった。
「暇、暇、暇。男ってのは何時でもそう…………つまりこういうことだな?ほれほれ、ここがいいんだろ。こんなに、カチカチ音をならして………全く、君も中々誘うのがうま……」
「そんなことはいってない!!」
「そんなことはいってねぇ!!」
悪ふざけが過ぎたのか歌仙だけでなく獅子王からも怒鳴られる。
彼岸花は肩をすくめてダイヤルを回しながら答えた。
「まぁまぁ、そう怒るなや。第一、暇ならこの扉を壊す方法でも考えて……………ん?」
カチリ、と小さく音がして彼岸花は視線を扉へと向けた。
「おやおやぁ?これは、もしや………」
今までとは琥となる音に彼岸花は立ち上がって、扉の窪みに手を引っ掛けた。
腕を引くと、扉がゆっくりと動き出す。
口を開けたまま扉を見ていた刀剣達の前で、扉はその先の闇を見せた。
「あ、開いた………」
「す、すごいです!!やりましたね!」
今剣がはしゃぐ声も遠く、彼岸花は埃の充満するその先を見ていた。
「妙な香りがするね。生々しい嗅ぎなれた………墓場の香りだ」
冗談なのか本気なのか、今一つ判断のつかない言葉を青江が言う。
その香りは彼岸花の鼻にも届いていた。
人が屈んでようやく入れるような狭い入り口。それを潜って、彼岸花は懐から懐中電灯を取り出した。
「灯りをつけるよ」
念のために呟いて、灯りをつける。
「!!」
そして、その先の光景に思わず息をのんだ。
後ろでそれぞれ短く悲鳴をあげたり、うめいたりする声が聞こえる。
皆の恐怖を少なからず煽ったそれは、扉の先で眠っていた。