第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
「好きだったんだね。加州の事。」
「……………………」
彼岸花の言葉に今剣は口を引き結んだ。
泣き出しそうな顔で、彼はうなずく。
「あたりまえじゃないですか。ふたりで、いっしょにこのほんまるをつくったんです。はたけをたがやしたのも、くらのそうじをしたのも。ぜんぶ、ぜんぶぼくたちがやったんだ」
今剣の言葉で彼岸花は今剣がずっとついて回っていた理由を少し、理解した。
彼にとって、この本丸は荒らされたくない場所なのだ。何を犠牲にしても、彼には取り戻したい景色がある。
そこに、加州清光が必要だと言うのなら………彼岸花は決意する。
「もう一度、私にも加州探しを手伝わせてくれないかな」
彼岸花の言葉に今剣は驚いたようだ。
それもそうだと思う。彼岸花の言ったことは、先日の発言と正反対なのだから。
「……………いいんですか?」
「私と、君が見たいものはきっと同じだと思う。私だって、皆でくだらないことが出来る場所にしたい。誰かが苦しまなくてもいい様にしたい。」
「………ぼくは、あるじさまにはむかうことはできませんよ。」
「それでも、出来ることは沢山あるよ」
「……………」
今剣の願いを叶えてやりたいと思う。
一つ、彼の願いが叶わない理由を知ったから。
彼岸花には言えないことがある。
それを、今は確信が持てるまで抱えていこうと思う。
「それで、出陣帰りだってのに集合したんだね。」
「それもこんなに複数を引き連れてねぇ」
石切丸と青江青江の発言で、現状は大体察してもらえただろうか。
彼岸花達は、今、再び例の部屋の前まで来ている。
青江の言う複数とはご丁寧にも集まってくれた優しき盟友達の事だろう。
「まぁ、任せてくれよ!加州清光を探すんだろ!」
獅子王がグッと親指を立てて言う。
「君、何処まで話したんだい?」
青江の質問に彼岸花は「全部」と答える。
「事情は聞いたよ。そういうことなら、もっと前に言えばよかったのに」
歌仙が言う。その言葉が全てを表していた。
「協力してくれるのはありがたいが、中は障気もかなり溜まっている。下手をすると刃が穢れるかもしれない。」
「えっ、何それ初耳。」
聞いてねーよ、と彼岸花は石切丸を見る。
「すまない。話すと協力してくれないと思ったんだ」
「ぶっちゃけましたね。まぁ、許すんだけど!」