第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
帰ってきた彼岸花達は、何と手入れを受けた。
彼岸花はてっきり放置されるとばかり思っていたので、これには驚いた。
手入れ部屋で天井を見ていると、何度か獅子王や歌仙達が様子を見に来てくれた。
皆、彼岸花が任務を失敗して落ち込んでいると思っているらしく、励ますような声もあった。
彼岸花としては、落ち込んでいるのは確かではあるが、その理由が任務の失敗じゃない事を伝えかねていた。
…………………亜種は、あの後そのまま時代そのものから居なくなったらしい。
その後の行方は不明。
奴について新たに政府が掴めたことは、その再生力や姿等々。中々によい結果ではあったらしい。
「…………………何だかなぁ」
亜種が話したことを、彼岸花は誰にも話していない。話せるわけがなかった。
最低限、政府に力を貸してやろうと上から目線にそうは思う。だが、今回ばかりは何も言うことはない。
彼岸花が珍しく萎れていると、障子に影が差した。
顔をそちらに向けると、特徴的なシルエット。小さなその影に、彼岸花は息を飲んだ。
まさか、来てくれるとは思っていなかった。
「……………起きてますよー?」
彼岸花が声をかけると、シルエットが少し歪んだ。
そして、障子が控え目に開かれる。
立っていたのは今剣。
彼岸花は、少し微笑んでみた。
「……………かんけつにいいます。岩融をたすけてくれてありがとうございました。それでは………」
「まてまてまて。早い、早すぎるよ。まだ入って三十秒だよ。」
立ち上がろうとした今剣の服をつかんで彼岸花は引き留める。
「君に話があるんだ。」
彼岸花は、彼の様子を窺いながら言った。
「……………なんですか」
「この間はごめんね。酷いことを沢山言った。」
「きゅうになんなんです?」
「急、ではないと思う。私としてはずっと言いたかった事だから」
室内に沈黙がおりる。
今剣はじっと彼岸花の顔を見ている。何か、別の意図がないかでも図っているのだろうか。
彼岸花は、彼が口を開くまで待った。
「ぼくは、だれがなんといおうと加州をさがします。加州はふたりになってしまうけれど、それがダメなわけじゃない。」
「さいしょから、ぼくのともだちはあの加州ですから」