第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
(なーにが、絶対に助けましょうねだ。私のアホ)
検非違使の強さをなめてかかっていたことは間違いない。しかし、ここまで強いのか。
「今まで結構強い奴とは戦ってるんだけどなぁ………」
呟いたってどうしようもないことではあるが、口にしてしまう。
検非違使は物凄く強い。
攻撃が通らない。
一歩の距離が遠い。
足が踏み込むタイミングを失って、息が上がる。
彼岸花は必死に刀を構えた。
岩融が到着して、しばらくの時間がたった。
頂上はそれほど広くないはずなのに、すぐ隣を確認することが出来なかった。
顔をそらせば死ぬ。新しくできた傷が痛いほどしみた。
さんさんと照りつける太陽が憎らしい。検非違使は汗ひとつ流していないのに、彼岸花達は汗だくであった。
足元すら確認する術のない中で、必死に距離をとったりつめたりする。何度か見方の刀剣達に助けられたり、助けたりしたが、何がなんだかもう、わからなかった。
ただ、目の前の敵を捌く。
検非違使の数は増えるばかりであった。
後から後からブクブクと沸いてくる連中に、皆消耗させられているのは事実だ。
(何か、なにか打開策を………)
彼岸花は息を吐く。
その呼吸のズレを狙って、検非違使が斬り込んできた。
「っ!!」
一瞬の出来事。
「いっ!!……………っあぁ、もう!!」
歯をくいしばって、彼岸花は痛みを叫ばずやけくそに飲み込んだ。叫ぶのを、負けず嫌いな自分が拒否する。
肩を見ると、深々と槍が刺さって後ろまで貫いていた。
敵の槍をにらむ。
一矢報いてやろうと彼岸花が考えた時、叫ぶ声が聞こえた。
後ろを見て、彼岸花は突き刺さった槍を抜いた。肉の切れる音、繊維が切れる音。生々しいだけの音。耳元で聞こえるそれを無視して、走った。
何時のまにやら戦闘に加わっていたのであろう、前田が太刀に飛ばされる所が見えたからだ。
「!ああああ!アイキャンフライ!」
「…………!」
例によって例のごとく崖に落ちる前田。敵もそれを狙って、やったのだろうが少しは慈悲をもて!
ギリギリで掴んだ前田の手を彼岸花は心底ホッとして、強く握った。
「良かった、間に合った」
泣き出しそうな前田の顔を見て、彼岸花は笑ってしまう。
前田と繋いだ手から、傷口が開いたらしい。
ポタポタと血が流れて、繋がれた腕を伝っていく。