第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
検非違使という化け物は、岩融の話によると刀剣と歴史修正主義者の両方に攻撃をしてくるらしい。
「ならもっと早く来てあの亜種を始末しろよ。人が終わった頃に来やがって。悪意しか感じねぇ………」
彼岸花は呟いた。流石の岩融も同意見なのか、何も言わない。
「検非違使についてであるが、奴等の特徴はそれだけではない。最も注意すべきはその戦闘力だ。」
「戦闘力?物凄く強い、ってのは貴彼岸花方達の反応でわかってますけど。」
「物凄く強いだけでない。連中は、此方の最も強い者と同じ強さに変化する」
「…………えっ、どういう理屈?生命の神秘?」
コピー能力、ということか?しかし、強さだけが変貌するとは………おかしすぎるだろう。
聞けば聞くほど現実味がない。まぁ、彼岸花達も、歴史修正主義者も、現実とはかけ離れた存在だが。
知れば知るほどこの世界には不思議だらけだ。
「訳わかんねぇべな。それで、えっと、こっちで一番強いのは?」
「今剣だろうな」
岩融の返答に彼岸花は目を丸くする。
「えっ、短刀………とかは、関係ないか。そうか、最初からいるんだもんね」
「あぁ。先程は短刀という立場で活躍出来なかったが、そもそもの強さなら一番だ」
「ほー。」
なんだかよく解らない返事を返して、彼岸花は今剣を思った。
今剣は、この本丸に現在最も長くいる刀だ。
戦に出た回数も他とは違うのだろう。それに、小娘の酷い仕打ちをみた回数も。
あの夜の取り乱し方は尋常じゃなかった。岩融がそれを知っているのか否か、今でも聞けないが聞いたところで事実だ。
「………絶対に助けましょうね」
「当たり前だ」
短く会話を交わして、二人は階段に差し掛かった。
岩融に言われ、先に階段をかけ上がった彼岸花は丁度此方に背を向けていた検非違使に斬りかかった。
「後ろから失礼!」
まず一匹ーーーとはいかなかった。
「固っ!?」
相手に斬りかかった事でダメージを受けたのは彼岸花の方であった。手が痺れる。
(なんじゃこりゃ!?石を斬ったのかと思ったわ!!)
固い、とにかく固い。
彼岸花が一歩下がると、検非違使が振り返った。
その隙を見て、髭切がそいつを殺し、彼岸花を見る。
ぱっと、顔を明るくふる髭切。
「生きてたんだね、良かった」
にっこり笑われて言われる。
(か、かっこつかねぇ)