第3章 第二章 変化を求める、カメレオン
拒絶された。そう思ったとき、既に彼は彼岸花へと背を向けていた。
「待って」
彼岸花が呼び止めるも、彼は振り返らない。言うことはもう、いい終えたという事か。ならば………
(今度はこっちのターンだよな)
………彼岸花は走り出した。
わざと音をたてて走れば、流石に不味いと思ったのか彼が振り返った。
そこを狙って、地面を蹴り跳躍する。
五輪も拍手喝采の動きで彼を飛び越えると、回転しながら着地した。位置的には丁度彼からイチメートル前の地点である。
自身の前に着地した彼岸花を見て、唖然とする眼帯の刀剣男子。
それは、一連の謎行動に驚いているのかもしれないし、彼岸花の動きに驚いているのかもしれない。真偽は定かではないが、彼岸花が顔をあげるとハッと、表情を引き締めた。
「どう?五輪も拍手喝采の動きでない?」
「え……………」
「いいよ、そんな顔しなくても。流石に五輪は諦めてるさ。何処にも所属してない素人が出れる大会じゃないってことくらい私も知ってる」
悲しい顔をして見せる彼岸花に、眼帯君の顔は冷めていった。今思えば、女のそういう顔が嫌いなのかもしれない。
「………………それで?何がしたいんだい」
「はじめてみたでしょ、こんなことする刀」
彼岸花が笑って聞くと、吐き捨てる様に頷かれた(どういう表現かとは自分でも思うがそういう感じであった)。
「そうだね。非常識だよ」
「ね。他の誰かはこんなことしなかった。」
そこまで彼岸花が言うと、彼も察しがついたようで目を丸くされた。
(そうそう、その顔が見たかったんだよ)
「私は君が知ってる誰でもない。非常識で、訳のわからない女だ。だから、私を止めることなんて君には出来ないよ。私はこの本丸を変えてやるんだ。同情でも媚びでもない。私の誇りにかけてね」
「…………………確かに、君は少し違うのかもね。だけど、最後は一緒だよ。火が本当に恐くない存在が居ないように、君だって何時かは恐怖に押し潰される。突っ掛かっていくのは構わないけど、僕らに飛び火するのだけはやめてくれ。」
「……………いいだろう。それくらいは約束する」
「………………」
彼岸花が頷くと、彼は横を抜けて歩いていった。
…………何かは変わったのだろうか。
「あぁ、そうだ。今日の八時半、座敷に集合だから」