第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
「……………………………………現在までで既に、数千人越え………」
一軍の帰りを待っていた面々は、こんのすけの言葉に雑談を止めて振り返った。
「数千人越え?何の話だい?」
歌仙が話しかけると、こんのすけは覗き込んでいた電子機器の画面からほんの少しも目を離さずに、呟いた。
「例の亜種退治に出た審神者様の人数がです………」
彼の見ている前で、電子機器の画面は変化をし続けていた。
電子機器の意味すらよく解っていない歌仙達は知らないが、変化の内容は討伐者の人数。
本当に恐ろしいのは現在も増え続けるその人数とは反対に、討伐成功報告が一件も持ち上がってこないのだ。
それの意味するところはつまり………
(誰一人として、成功していない)
あり得ない事態だ。討伐に向かっている刀剣達の中には名のある本丸の者たちだってざらにいる。
それでも、届いていない。
「亜種退治に出た人数がそんなにいるのなら、あっちは俺達だらけかもな。笑えないけど」
獅子王が呟いた。
本当にそうだ。笑い話じゃない。
「彼岸花様……………」
こんのすけは少女の名前を呟いた。
彼女は、以前に闇落ちした太郎太刀と刀を交えた。
その功績を買われて今回の討伐に出た彼女ではあるが、忘れてならないのは彼女はまだまだ戦の素人だと言うことだ。
名のある本丸で鍛えられた刀剣ですら届かないのに、彼女が亜種を倒せるとは思えなかった。
……………いや、倒せないのならまだいい。
悪いのは、逃げることすら出来ないことだ。
お守りがある。だが、あれは一度きりの産物。二度目はない。
(審神者様に頼んで、撤退命を出してもらうか………?いや)
無理だ。
審神者が今回の討伐に出たのだって、回りに自身の実力を見せつけるため………人が嫌いな彼女は、人に負けることも同時に嫌っている。
他の審神者も退いた。そんな理屈は通じない。
そして何よりも、彼女は刀剣の事なんてどうとも思っていない。
「………………」
こんのすけの額に汗が浮かぶ。
(………いや、違う)
こんなこと、考えたって意味がない。
待つと、決めたのだ。自分も、他の刀剣達も。
きっと彼女は当たり前みたいに帰ってくる。
帰ってきて、何時もみたいにまた出ていって。そうやって、でも最後には戻ってくるはず。
(……………そう、信じてます)
彼岸花様。
こんのすけは画面を見ることを止めて、祈った。