第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
階段をかけあがる音が辺りに響く。
隠れる場所のない現状としてはゆっくり上がるだけ無駄であった。
真っ先に階段を上り終えたのは今剣、続いて骨喰。
二人は頂上に着くと同時に、足を地面へと強く叩きつけて、跳躍した。
そのまま歴史修正主義者の亜種に向かって一撃。狙うは首だけ。当たれば即死。
だが、目の前に刀が迫っていてなお大人しくしている生物などいやしない。
亜種は大きく翼を動かして、風を産み出した。
砂埃が舞う。
彼岸花は一瞬自分が吹き飛ばされたかと思った。そう錯覚してしまう位の風圧であった。
ブンッ、と空気を斬るような音がした。
ハッとして見ると、それは岩融が自身を振るう音だった。
岩融の一閃で視界が晴れる。
彼岸花は踏み込んだ二人の位置を確認した。
二人は、それぞれ先程の位置から大分下がった場所にいた。
(怪我はしてない………)
あー、よかった。なんて言える状況じゃない。彼岸花は、刀を構える。
だが、彼岸花が行動に踏み込む前に岩融と髭切が亜種と対峙していた。
「がははは!!こりゃ久々に面白い!軽い二人は吹き飛ばされてしまったか!ならば、次は俺達が相手をしよう!異形の者よ!!」
歌舞伎か劇のワンシーンの様に、岩融が高らかに声をあげる。
彼岸花がポカーンとしていると、髭切が刀で試すように空気を斬った。
「鳥、鳥かぁ。鳥は斬ったことあったっけ?…………まぁ、君ほど大きな鳥は初めてかな。腕がなるねぇ」
口元に笑みを浮かべる髭切の目は、殺伐としていて。とてもじゃないが彼岸花には彼が先程までの彼とは思えなかった。
誰が怒鳴った訳でもないのに、空気が震えている。
解る。この二人は、強い。いや、それだけじゃない。踏み込めない何かが出来上がっていた。
「………………………」
彼岸花構えをとかずに、二人の様子を見守った。
……………亜種は間近で見ると、鳥と獣の間の子のようであった。
言ってしまうと大型の犬科動物に四枚の翼が生えたような感じだ。
特徴として奴には嘴がなく、牙のはえた口と黒い尾っぽがある。目はギラギラとしていて、目の前に立ち塞がる二人を睨んでいた。