第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
山頂に近づくにつれて、嫌な気配がしてくる。
その元凶が何であるのかは既に全員理解しているので、下手なことを言うものは居ない。
「それじゃあ、そろそろ山頂だし偵察を行おうか」
髭切が言った。
その言葉に皆頷いて、今剣と骨喰が行くこととなった。
「今剣、よいか危なくなったら戻ってくるのだぞ」
「はいっ、岩融!」
元気よく返事をする今剣に昨晩の暗い顔はない。彼岸花はそれを見ながら、二人がいかに互いを大切に思っているのかをぼんやりと理解した。
「……………………」
そんな彼岸花の横でスッと立ち上がる骨喰。
彼岸花は顔をあげて、骨喰に一言声をかけた。
「気をつけて、いってらっしゃい」
軽く手を振ると、無表情のまま振り返された。
「彼と仲がいいんだね」
二人が居なくなって、不意に彼岸花は声をかけられた。
「まぁ、私は大切な仲間だと思ってます」
かけたのは髭切。地味に彼から声をかけられるのは初めてなので、少し固い声になってしまった。
「そっかぁ………うん。やっぱり君は悪い刀には見えないな。冷たくしてごめんね。」
「………………………」
(な、んだと…………?)
彼岸花は思わず半開きの口を閉じることもせずに髭切を見た。
横目で見れば、蛍丸も同じような表情である。それもそうだ。何故、この人はこう………掴み所がないのだろう。
全く持って予想外。正直、彼岸花の何が彼の琴線に触れたのか検討もつかない。
握手を求めるように手を伸ばされれば、彼岸花は内心Iwill always love you を流すしかなかった。(エンダー!!イヤー!!のやつ)タイタニック。
「ご、誤解が解けたのなら何よりです。よろしく」
手を握ってみても強く握りかえされる、とかそんな展開はなかった。
正直よく解らんが、何となく解りあえたらしい。かっこ彼岸花は全く持って相手の事が解らない。
「今度、僕の弟の…………………鹿丸も紹介するよ。とってもいい子なんだ」
「鹿丸、さん?まぁ、会えるのなら」
(しっかし、動物の名前多いなぁ)
蛍丸がやたら見てくるのだが、それは放置。
この時、彼岸花は彼が気に入らないと思って睨んでいるのだとばかり思っていたが、実際のところ彼は少し彼岸花に同情すらしていた。
彼岸花の誤解が解ける日はもう少し先である。
