第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
四枚の翼で羽ばたくそいつは、その後も暫く彼岸花達の上を回っていたが、流石に森の中にまで突っ込んでくる気はないらしく、山の頂上へと飛んでいった。
「やっぱり上かー。」
「あるじさまにれんらくをいれなくていいのですか?」
歩き出そうとする髭切に今剣が声をかける。
彼岸花含め皆の視線が髭切に向くが、彼は笑って首をかしげた。
「うーん。それがねぇ、この子壊れちゃったみたい」
この子?と皆が目を瞬かせる前で、髭切は相変わらず何がおかしいのかニコニコと通信機を取り出して見せた。
その場に沈黙が落ちる。
「「「………………………はぁ!?」」」
一拍おいて、蛍丸、岩融、今剣、の三人が声を合わせて髭切を見た。
「だから、今は連絡出来そうにないかな。ごめんね」
「あ、あれほどでんしききはだいじにあつかえってみんないったんですよ!?」
「うーん、ごめんね?」
「謝ってどうにかなる問題ではなかろう!このままでは本丸に帰ることも叶わんのだぞ!!」
今剣、岩融と続いて怒るが髭切は気にする様子がない。
(半端ねーな、この人)
彼岸花は寧ろ呆れを通り越して面白くなってきた。
そんな中、声をあげた三人の中で唯一続けて文句を言わなかった者が一人。
「………まぁ、こっちから連絡がなかったらこんのすけが気付くと思うよ。それよりさ、折角の機会なんだ………」
冷静な口調を装った彼は、その幼い顔にニヤリと笑みを浮かべた。
「ーーー自由にやろうよ。久々に」
まさに戦闘狂。
彼岸花は急に態度の変わった蛍丸を呆然と見ていた。
蛍丸の目がギラリと危ない色をともす。
彼岸花は不意に、これが本来の性格なんだなと納得した。
「……………まぁ、どのみち奴を倒さぬ事にはどうにもならぬか。よかろう、蛍丸。その案、俺も乗った」
岩融が頷けば、次々に賛同する声が上がった。意外だったのは髭切までもが頷いたことだ。
(存外、戦闘好きなんだなぁ。皆)
刀とはそういうものだと誰かが前に政府でい言っていたが、本当らしい。
「というわけで、我等は上に向かうがどうする小娘」
挑発するような岩融の様子に彼岸花は呆れたし、ムッとした。
しかしそれでも、選ばねばならぬことを解っていたので、彼岸花は頷いた。
「行くよ。当たり前だろ」
「ほう、そうか。ならば前進だ」
彼岸花達は、山頂を目指した。