第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
普段とは違う場所に出た彼岸花達は、その後、少し山の中を歩くことになった。
「それにしても、奇っ怪なこともあるもんだ。これも、例の亜種とやらが原因か?」
岩融という大柄な薙刀がそう呟く。
「うーん、そうなのかなぁ。解らないや」
「そうか、ところで何処へ行く?上か下か。」
辛うじて獣道の様なものを発見したので、岩融が尋ねる。
髭切は山の頂上付近を見上げると、賽子を取り出した。
「やっぱり、これで決めようか。僕は上がいいんだけど」
そう言いながら振られる賽子。出た目は………子。
「上だね」
「上だな」
「うえですね」
「上かー」
「上」
(上ねー)
それぞれ反応を返す面々。
彼岸花はふとその最中で、空を見上げた。
「?」
「どうした」
先程から此方を気にかけてくれている骨喰に、彼岸花は感謝しつつ向き合った。
「いや、何か今、聞こえたような………鳥の羽音?」
「そりゃ山なんだから鳥くらい、いるに決まってるじゃん」
蛍丸に此方を見ることもなく言い捨てられる。
彼岸花は思わずムッとしながら、反論しようとした………その時だ
「な、なんだあれは………!!」
よくあるモブキャラのような台詞を岩融がはく。
彼岸花がその発言に同じような感想を抱きつつ空を見ると、そこには真っ赤な鳥が。
「ひ、火の鳥………」
思わず呟いた言葉が、岩融の発言に負けないくらい間抜けなものと理解はしているが、そうとしか言いようがなかった。
彼岸花達のいる森の遥か上空、そこを飛んでいくのは四枚の翼を持った赤い鳥。
場違いなその存在はグルグルと彼岸花達の上を回っている。
「っ!いけない、伏せて!」
小声で叫ぶ髭切。
のほほんとした彼の真剣なようすに、皆黙って従った。
「………もしかしてあいつ、俺達を探してる?」
蛍丸が目を細めながら呟いた。
「もしかしなくとも、そうであろう。しかし、おい娘。」
「………名前で呼ぼうよ。まぁ、いいか。なんだい岩融さん」
「先程、火の鳥と言うておったな。それは、朱雀の事か」
岩融に聞かれて、彼岸花は目を丸くする。
朱雀、成る程そうとも捉えられるか。
「あー、朱雀かぁ。朱雀………」
髭切が岩融の言葉に納得したように何度も頷く。
「まぁ仲間なんじゃないですか?」
曖昧に返事をして、彼岸花はせっかちに空を見上げた。