第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
彼岸花はそれを聞いて、目を丸くした。
そして、それから何かが込み上げてくるのを感じた。
「………ありがとうっ!!」
力一杯言うと、皆笑ってくれた。
彼岸花は小さな刀装をぎゅっと抱える。
「ちょっとちょっとー。あんましそっちだけで盛り上がらないでよね」
建物の陰からひょっこりと顔を覗かせたのは次郎太刀。
「次郎さん、何か随分とお久しぶりな気がする。」
「まぁ、中々集まんなかったかんねー。取りあえず、渡したいものがあって来たのよ。ほら、兄貴も!!」
グイグイと建物の陰らへんで何かを引っ張るようなモーションをとる次郎太刀。
「早くしないと、出陣の時間になっちゃうじゃないの。男なんだから、出なさいって!」
その言葉にようやく建物の陰から太郎太刀が出てきた。
「おぉ、太郎さんも一緒でしたか」
「ご、ご迷惑でしょうか。」
大きい体には不釣り合いな位不安そうな顔をする太郎太刀。
彼岸花は首をふった。
「いいえ、寧ろ嬉しいです」
「……………そうですか。ならば、良いのですが」
「それで、渡したいものとは?」
彼岸花が期待に満ちた顔で尋ねると、太郎太刀は少し迷ったり次郎太刀の顔を見たりしてから、何かを取り出した。
綺麗な布に包まれた何かが差し出される。
「?これは……………お守り。お守り!?かの有名な!?」
「どんな有名だよ」
獅子王が苦笑いするのも気にせず、彼岸花はお守りを見たり太郎太刀の顔を見たりした。
「えぇ。実は、昔主に戴いた物がありましたので、それに次郎太刀と二人で霊力を込めてもう一度使えるようにしました」
「今の私らじゃこれが限界だけどね、一回は必ず機能するから」
「流石だねぇ、霊力を縛られた状態でもこれ程の事が出来るとは………」
歌仙が感心したように呟いた。その横では、燭台切も驚いたような顔をしている。
「私達が持っていた物でも良ければ、どうか受け取ってください」
「太郎さん……」
「はい。何でしょう……」
「ありがとう!!本当に本当に嬉しい!!」
「は………い、それは何より」
彼岸花はぎこちない太郎太刀の手を一回握って、それから次郎太刀の手も握った。大きな手に心からの感謝を送って、ここにいる皆に笑顔を。
「本当にありがとう!何がなんでも勝って帰ってくるから!!」
そう彼岸花が言ったとき、丁度出陣の合図が聞こえた。