第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
ーーー「岩融ぃ!!!!」
子供の叫ぶ声が辺りに響く。
必死に手を伸ばす少年。しかし、思いで物理を越えることはまだ出来ない。男は、崖のそこへと落ちていく。
ーーーッパン!
と、妙に清々しい音を立てて少女が男の手を掴んだ。
しかし、体格差は歴然。そのまま、少女も一緒に崖を落ちていった。
ーーー屋敷の裏手にて
門の前で出陣メンバーがそれぞれ本体の様子を見たりするなかで、彼岸花は屋敷の裏手に呼び出されていた。
「いいかい?危ないと思ったら最悪君は逃げるんだ。鍛度の低い君は足手まといにしかならないからね。」
「おうおうおう。随分なことを言ってくれるじゃねーか、歌仙さんよぉ」
「本当のことだよ。戦場で何より優先するべきは仲間の命。君が足を引っ張ることで誰かが命を落としたら、それこそ君が苦しむんだ」
「なんか、ようやく人として正しいことを言い始めたね」
本音を言うと頭に拳骨がふってきた。
「い、ってー!!ちょ、歌仙さんマジぱねぇ」
彼岸花が歌仙を睨んでいると、横から愛染が駆け寄ってきた。
「彼岸花さん。」
「おう、どしたい」
「さっきからなんなのそのキャラ」
燭台切の言葉を流して、愛染の前に少し屈む。
「蛍のこと、宜しくな」
「……………うん。任せておいて」
愛染の心配そうな顔に少しだけぎこちなく微笑んで、彼岸花はそれでも約束をした。
「まぁ、蛍は強いから!寧ろ守ってもらえると思うけどな」
「そりゃ頼もしいね。」
彼岸花は少し大きな声で言って、愛染の大切な蛍丸を思った。
亜種は随分と強いらしいが、それでも負けるわけにはいかないし、誰かを欠けさせる訳にもいかない。
だから、何が起こるかは解らずとも必ず皆で帰ってくるのだ。そう、内心誓う。
「それじゃあ、僕らからはこれを」
燭台切が一歩前に出て、彼岸花に金色のなにかを渡す。
「え、金の玉くれるおじさん?これが、おじさんの金の玉なの?」
「ちょっと!女の子が何てことを言うんだい!!刀装だよ!刀装!!」
「あーーー。なるほど、これが噂の………って、いいの?」
資材使ったんじゃないのか、と視線で訴えれば燭台切が獅子王、一期、鳴狐、歌仙と顔をあわせ、大倶利伽羅を見てから教えてくれた。
「皆でね少しずつ貯めていたんだ。君が次に無茶する時のために」
燭台切が悪戯っぽく笑う。