第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
そうは言ったが、少し困った。
こんのすけは小娘に命を握られている上に、主従関係の云々から聞かれれば答えない訳にはいかない。
となるとつまり、相談したくとも場合によってはこんのすけには情報を渡せないということだ。
(まぁ、最悪の場合だけどね)
「……………………………………あ、待て。待てよ。あ!!」
「ど、どうされました!?」
すっとんきょんな叫びをあげた彼岸花を、こんのすけがこれまた驚いた顔で見ている。
「どうしてこんな初歩的な事に気づかなかったんだ!!そして、どうして誰も何も言わなかったんだ!」
「……………すみません。やはり、私が話たせいで何か不都合が………」
「………心を鬼にして聞こうか。こんのすけ、私があの部屋から帰ってきたこと、小娘に言った?」
「………………………………え?」
彼岸花の問いに、こんのすけが心底間抜けな顔をした。
「成る程、情報源はこんのすけじゃないか。…………………参ったな」
こんのすけの顔から、彼がそれを言っていない事は解った。ならば、情報はどこからもれた。
色々と候補は挙がるが、それを確認するすべなんて彼岸花にはない。
「あぁー。最悪だ。よりにもよって今頃それに気付くか」
髪を大袈裟にかきあげて、彼岸花は畳にドーンと横になった。
「あああああ。……………………あー、まぁ、いいか。今までと特に何も変わっちゃいない。そう、そうだとも。」
唇を尖らせて彼岸花は呟いた。はたから見ればかなりおかしな姿になってるとは思うが、もういい。構いやせん。
「寝るか。うん。寝よう、寝るぞこんのすけ」
「え、私も寝ていいのですか」
「何を聞くんだね。睡眠は生物の三大欲求だよ。食欲、睡眠欲、はっちゃけたい欲」
「最後のは貴方だけです」
「知ってる。でも、いいや。私にはその三つだもの」
半分ほど目を閉じてこんのすけを抱き寄せる。
「亜種か。まぁ、駆逐してや……る…………」
室内に静寂が訪れる。
「………………………………………お休みなさい。彼岸花様」
あと、酷い寝落ち方ですね。そう内心だけで付け足して、こんのすけはため息をついた。
何一つ、力になれやしない。こんな小さな少女に全てを背負わせることしか出来ないなんて。
(せめて、明日も無事に帰ってきてください)
願うとしたらずっと上の天の神に、こんのすけは祈った。