第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
「それじゃあ、そういうことで。お願いします」
「それは解ったけど、君もずいぶんな事を思い付くねぇ。更にはそれを強要してくるね」
「いちいちそういう言い方しか出来ないんすか。」
「馬は大きいねぇ………体のことだよ?」
「何その有罪発言」
彼岸花は青江の笑顔を心底殴りたくなった。
だかそれを抑えて、石切丸と腕の中の今剣に向き合う。
「……………今剣君が起きたら、また話がしたいと思っています。だから、そう伝えてください」
「……………今剣もね、君の言葉を理解はしてるんだよ。自分でも、悪いとは思っている。」
「………解っています。でも、だからこそ私はもっと言葉を考えるべきだった。」
「優しくいったところで、伝えるべきことは変わらないよ。君も、伝えたいことを口にしただけなのだろう?なら、寧ろそれを誤魔化す方がいけない。」
「……………私は、人が嫌いじゃないんです。酷い人もいるけど、それ以上に優しい人だっているんです。悪い方だけを知って否定なんてしたくない。」
彼岸花は石切丸の顔を見ながら言った。
石切丸は少し目を伏せて頷いた。
「……………解っている。本当は、この身を持った時から気づいていたよ。確かに、やるべきことは誰も変わらないんだろう」
「人も僕達もね」
青江が付け足すと、石切丸が青江をジトッと睨んだ。
「青江、君も何か謝らないか」
「そうだねぇ…………………………悪かったよ。僕もまだ、人のすべてを理解しきれている訳じゃないみたいだ。」
青江は案外すんなりと謝罪を口にした。
彼岸花はその事に驚いたが、考えてみれば彼岸花は彼の何も知らないのだ。決めつけていては変わらない。
「私もだよ。だから、もっと知りたいと思ってる。」
「……………知ってもし、その本性が幻滅するようなものだったら?」
「青江」
石切丸が咎めるように名を呼ぶが、彼岸花は気を悪くする訳でもなく首をかしげた。
「いや、それはないと思うよ。だって、君達二人ともこんなにいい人なんだし。」
「…………………………誉めてくれているのは嬉しいが、どういう意味だい?」
「今の言葉は二人の本心でしょう?なら、きっとそういうもんなんだよ。人の本音だって、私達と変わらないはずだ。『傷つきたくないし、それ以上に誰かを傷つけたくない。理解したいと、何処かでは思っている』ほらね、何も変わらない」