第3章 第二章 変化を求める、カメレオン
彼岸花が荒れているだけで何もない庭を見ていると、微かに足音が近づいてくる事に気がついた。
「足音…………」
「足音…………?…………っ、いけません、早く隠れてください!」
「え、え?」
こんのすけに言われるがまま、彼岸花は襖を開け、近くの部屋に引っ込んだ。
そこは随分と使われていない様子の部屋だった。畳には埃がうっすらと積もっているし、全体的に空気が汚い。灯りがついていないので真っ暗ではあるが、夜目が効くお陰でよく見えた。
元々綺麗好きの彼岸花が顔をしかめていると、足音が先程よりもはっきりと聞こえてきた。
慌てて、襖に耳をつけ廊下の音を拾う。
すると、何やら話し声が聞こえてきた。
『…………おい、…丸!』
『ん?あぁ、お前か』
『………これから、また、主のところへ行くのか』
『あぁ。また、呼び出されている』
『………………そうか。君は、何というかこんな時でも君なんだな』
『?何時だって俺は俺だが』
『そういう意味じゃないさ』
「どうやら、話しているのは鶴丸国永と鶯丸のようです」
「………………あれだ、白い人と鴬色の人やろ」
廊下の二人に聞こえないよう、小声でこんのすけと話す。
こんのすけが彼岸花の言葉を肯定した所で、彼岸花はどうしても尋ねないといけないことがあった。
「それよか、あの二人は何の話をしているんだい?なんか、どっちかが小娘のところへ行くみたいだけど…………まさか、これから殴られるの?」
控えめな問いに、こんのすけは首を振った。
「ある意味で、もっと悪いことです」
「もっと悪いこと……………ま、麻薬の使用?」
「本気で言っておられますか?」
「………………すみませぬ。冗談です。いや、でも、私が真面目に予想してる方も正しいかどうか…………」
「因みに、何を考えて?」
「あれだよ。AVに出てくるような事だ」
「まぁ、気味の悪い話ではありますが、その通りです」
「…………………本当かよ」
冗談半分で言ったのだが、まさか本当にそういう事だとは。
(…………まぁ、私自身さっき小娘に臭いって言ったしな)
それなのに冗談半分ということは、何処かで否定していたのだろうか。
(そこまではしていないと?)
本当に、そう思っていたのなら、何と自分は健気なことか。初めての主に、まだどこか、期待しているなんて。