第3章 第二章 変化を求める、カメレオン
「あ、彼岸花様!鴬丸が行ってしまいます!」
「え、ちょっと待ちなさいよ。それなら、止めないと…………!」
「お待ちください!」
彼岸花が襖に手をかけると、こんのすけが目の色を変えて止めに入ってきた。
「!」
驚きつつも、自分より断然本丸に詳しいこんのすけに従う。
「今は、駄目です。今、出ては…………」
まただ。また、こんのすけは震えている。
思えば、初めに彼岸花を持っていた青年も震えていた。
でも、今は刀じゃない。彼岸花は、こんのすけの頭に手をおいた。
「もちつけ。今、出たらどうなるの?」
「殺されます」
「…………………わお」
斜め上どころか、頭上に飛んだだけで、予想に掠りすらしていない回答であった。
「因みに、それは誰に」
「鶴丸国永にです」
「まちたまえ」
「はい」
鶴丸国永に殺される?自分が?冗談じゃない。というより、冗談じゃないから困るのだが。
我ながら意味のわからない事を考えつつ、襖から離れる。
「え、何で?何故、私が殺されるの?あの人と私、初対面。話したこともない、赤の他人。オーケー?」
「いいえ、よくはありません。」
「で、ですよね」
「あの方は、鶴丸国永は少し、壊れてしまっているのです」
「………………………」
彼岸花が無言で返すと、こんのすけは畳におりてしまった。
毛に埃がつく。思わずそう思ってしまった。
「この本丸に何があったのか。貴方様から見れば、この現状は異常なものでしょう。ですが、既にこの状態まで堕ちてーーー二年が経過しているのです」
「二年…………」
二年間も、この状態。
それはつまり二年もの間、誰も何も出来ず、またさせず、地獄が続いていたということだ。
世の中には慣れというものがあるが、これに関しては慣れてしまってからが終わりなのかもしれない。
(というより、座敷でよく殺されなかったな。私)
結構雑魚寝をしていた時間は長いのだが。
「なんか、色々と知ることが増えましたね。どうしたもんかなぁ……………。因みに、話ができる人は?」
「申し訳ありません。私も刀剣男子の皆様とはもう長らく話をしていないので………」
「それもすごい話だ。………あ、もしかして、明日には出陣があるかな?」
「えぇ。あると思いますが」
「なら、そこが最初の正念場だな」
本丸の外という空間ならば、接近をはかれるかもしれない。