第3章 第二章 変化を求める、カメレオン
静かな廊下を歩く彼岸花。
彼女は現在、ご機嫌であった。
その理由は彼女の頭上で前を向いている狐。ただの狐じゃあない。彼は、管狐だ。
そして彼岸花にとっては、右も左もわからない中で初めて出来た仲間なのだ。
さて、彼岸花が現在何をしているのかと言えば、本丸散策だ。
こんのすけの案内を元に屋敷を進む彼岸花。
彼岸花としてはこの散策中に他の刀剣達と会えれば幸いなのだが、さてさてどうなるか。
キョロキョロと辺りを見ながら、ゆっくり歩く。
焦ってはいない。気負っている訳でもない。彼岸花はここに来てまだ二十四時間もたっていない新人なのだし、一先ずは血眼になって焦る必要もないと思ったのだ。
こんのすけに聞いたところ、この本丸には現在49人(取りあえず、人の姿をしているのでこう呼ぶことにした)の刀剣男子がいるらしい。
それだけいるのなら、一人くらい鉢合わせてもおかしくないと、彼岸花は踏んでいた。
「あ、そうだ。あの小娘を倒せばこんのすけの呪術もとけるんだよね?」
「えぇ。恐らくその筈です。」
(やっぱりどっちみち、あの小娘を何とかするしかないのか)
気が重いなぁ。と、内心付け足す。
そもそも、あの小娘が具体的に何をしているのかすら彼岸花は知らない。
いや、あの癇癪持ちだ。恐らく、普段から感情のまま回りに当たっているのだろうが、何処までやっているのだろう。
こんのすけに聞けば解ることではあるが、何となく、口にするのが躊躇われてやめた。
それに、重要なことは自分で調べないと意味がない。
(しばらくは、情報収集かな)
そう、把握していることは多い方がいい。
戦においても、主の殺害計画にしても、それは同じだ。
しばらく歩いて、本来の裏側まで辿り着いた時、ふと彼岸花は庭に目をやった。
(そういえば、ここには花も木も草もないな)
荒れているにしても、雑草くらいは生えていてもいいのに。
彼岸花がそう言うと、こんのすけが若干声のトーンをおとした。
「実は、審神者様は植物がお嫌いなのだそうで。あの方か拒絶なさるので、植物もはえてこないのです」
「植物を拒絶?物言わぬリーフに対してもそうなのか。あの小娘は」
嘆かわしいと彼岸花は呟く。何から何まで合わない。あの小娘とは。
荒れているだけの庭なんて、寂しいだけなのに。