第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
ひたすら刀を整理する彼岸花と仲間達(仮)は、あれから何時間も特に進展の無い地味な作業を続けていた。
加州清光自体は刀の山から引くほど見つかる。それこそ逆に見ているこちらが心配するほどに。
今剣はその加州を一つ一つ確認して、そのたびに肩を落とした。
そういった作業が夜通し続いた一日目。結局、床にたどり着く事もなかった。
「そろそろ止めよう。続きは明日だ」
「なんだか、揉め事も進展もない一日目だったねぇ。今剣、一先ずこれで帰ろうか。君も辛いだろう?」
「……………解りました。」
青江に促されて今剣が立ち上がる。その額には尋常じゃない量の脂汗が浮かんでいる。もしかしなくとも、辛いのかもしれない。
気にかけるとか思っておきながら、気がつかなかった。
「………っ」
彼岸花は、気遣う言葉を口にしようとして、今剣がそれを望んでいない事に気が付いた。そこで、思考を切り替えて聞くなら今しか無いと思い、逆に踏み込んでみる事にした。
「ねぇ、この刀達はどうしたら消えるの?」
不謹慎な言い方ではあるが、そうとしか言えない。ここで変にオブラートに包んだところで、意味がないのは明白だ。
「消える、というのは無に還す、という意味かい?」
石切丸が怒らず聞き返してくれたので、それに頷く。
「それには主の力がいるね。………現段階でも随分と困難になってしまっているけど、それでも可能性があるのは主だけだ」
「よく解らないけど、つまり、小娘にしか出来ないわけか………」
「何か困るのかい?」
青江が聞いた。
その質問を何か不都合があるのですか?と、解釈した彼岸花は首を傾けた。
「困るというより、このままだと可哀想だなって。彼等だってここにいるよりは、その方がいいだろうし」
「難しいだろうねぇ。彼等はもう既にここのものにあてられ過ぎた。ここまで悪化したらもはや主でも元の無に還すのは難しいよ。」
「つまり、おちすぎたってことですね」
刀を見つめながら今剣が冷たく言いはなった。
その様子に少しゾッとするが、それを気付かないふりして彼岸花は刀を眺めた。
「溜め込んだって、それで何かが埋まる訳じゃないんだけどね」
夜風が吹きわたる。
彼岸花は今更だが、そっと目を閉じて手を合わせた。
「君が、ここにいても平気な理由が少しわかったよ」
石切丸が唐突に言った。
「何でですか?」