第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
「というわけで、彼岸花の奴は現在あの部屋に行ってる」
獅子王が言い終えると、燭台切がため息をついた。
「そっか。やっぱり忙しい子だね」
獅子王達が現在居るのは道場から一番遠い空き部屋。
元は燭台切の部屋であったここは、使われていないせいで埃こそ溜まってはいるが、整理自体は最も成されている部屋だ。
獅子王と歌仙が、道場前で燭台切に呼び出されたのは、数十分前。
どうにも燭台切は彼岸花に話があったらしいが、まだそれほど親しくない自分が二人きりになるのは気が引ける、とかで比較的仲のよい獅子王の力を借りようとしたらしい。(歌仙は自分がカウントされていないことに怒っていた)。
「それで、燭台切は何の話をしようと思ってたんだ?」
何だったら伝言すると付け足すと、彼は口を開いた。
「いや、前に料理を作るために野菜を育ててる、って言ってたのを思い出したから。それなら魚でも捕まえて料理すれば早い内から食事が出来ると思ったんだよ」
「ほう。つまり、君は魚料理を教えようと思ってたんだね。」
歌仙が言った。
「うん。あ、因みに魚は池にでも取りに行こうと思ってるんだけど」
「そういえば、あの池には魚がわんさかいたよな」
獅子王が思い出しながら頷くと、燭台切も頷いた。
「そうそう。今までは気力が沸かなくてやらなかったけど、今なら料理をしてもいいかな、って」
「だけど、その場合主には何て言うんだ。なんか、あの時以来また接触してこないんだけど」
「仕方ないよ。主の場合よくあることさ。暫くすればまた……………」
そこで歌仙の言葉が止まる。
その先を言いたくなかったのだろう。気持ちはよく解るので二人は何も言わなかった。
「………まぁ、ともかく主に何て言う?」
「うーん。まぁ、やっぱり一言は伝えないといけないよね。」
「それに、料理をするのならやはり野菜以外の食材もいるな。」
「それじゃあ、結局誰かが説得しないといけない訳か」
燭台切の一言に部屋がしんと静まる。
口にこそ出さないが、皆内心同じことを思っているはずだ。
「主が、俺達の言うことを聞くわけないだろ」
獅子王は敢えて言ってみた。二人の反応を知るためである。
「………でも、もし今日彼女が加州君を見つけてくれたら…」
「だけど、加州はあそこにいるのか?」
「解らない。でも、もし今日見つからなかったなら……………次は僕も探すよ」