第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
まさにそれは、彼岸花が気にしていた事だからである。
「………そうだね、意地悪な事だよね。だけどさ、それでも決めないといけないから、生きてるって言うんだよ。」
「わかりません。そんなこと」
今剣は拗ねたように言い捨てた。
彼にとっては悩ましい問題だろう。
彼岸花は、何とも言えずにそれ以上の言葉をのみこんだ。
「終わったよ」
暫くして、青江が金網から声をかけた。
覗き込むと別に先程と変わらない部屋があった。………が、何やら空気は軽くなっている。
何よりも、妙な声が聞こえなくなっている。
彼岸花は下に降りた。
「何だか、難しい話をしていたみたいだね」
「聞いてたのかい。感心しないよ、盗み聞きなんて」
「もしかしなくとも、それは僕の真似かい?」
因みに、今の台詞の主を説明すると上から順に青江、彼岸花、石切丸である。
「はははっ。で、盗み聞きしてたんだ」
「聞こえたのさ。少しだけど」
「なら尋ねるけど、二人はどうして加州を探してるの?」
彼岸花は笑うのを止め真面目な声で尋ねた。
二人はそんな彼岸花の豹変ぶりに少しだけ驚いた様だが、そこは流石である直ぐに何事も無いような顔に戻った。
「どうしてって、助けられる仲間を助ける事がそんなにおかしいことかい?」
と、青江。
「それに、彼は主の崩壊原因だ。彼が帰ってくれば主も元に戻るかもしれない。」
そう、石切丸。
「元に、ね……………」
彼岸花は石切丸の言葉に引っ掛かった。
元に、とは言うがなら元の小娘とはどんな人だった?誰なら奴の事を知っていた?何故壊れたのかをきっと誰も本当の意味では知らない。
「ーーーだから、私はそこが知りたいんだよ。どうして、小娘は壊れたんだろう」
彼岸花は言い終えると同時に、辺りを見渡した。
「ここに捨てられた刀達。彼等は、何を求めてるんだろうね。解んないけど、解ろうとはしないといけないって思う。小娘の事だって、嫌なやつなりに何か有ったんだろうね」
彼岸花の言葉に言い返す者は居ない。
その事も含めて、やはりまだまだゴールは遠いのだなと彼岸花は認識した。
「……………………まぁ、それを知るための幽霊探しだ。言い出しっぺでなんだけど、始めようか」
沈黙の中で彼岸花は笑った。