第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
正直なところ、彼岸花に幽霊なんてものはよく解らない。
加州を見つけるつもりはあるが、幽霊退治となると出来ることは皆無だ。
気合いで切ってみれば案外どうにかなるのかもしれないが、危ない橋を渡るほど今は追い詰められてもいなかった。
イコール彼岸花が取るべき行動は一つ。
ここで今剣と大人しく二人を見ていることだ。
彼岸花は、金網のそばに座って下を覗きこんでいる今剣に声をかけた。
「ねぇ、一つ聞いてもいい?」
「………………なんですか。ぼくもいそがしいんですよ」
「下を見ているだけだろ。君さ、加州を探してどうするの?」
「………………………………は?」
彼岸花の言葉に今剣が怪訝そうな顔で振り返る。
暫く点状態だった目が、直ぐにつり上がって怒りを露にする。
「あなた、なにいってるんですか。それとも、加州をさがすきがないんですか。それなら、かえってください。ぼくらだけでさがします」
「落ち着け。そういう意味じゃないよ。私が聞きたいのは前の加州を見つけて、今の加州をどうするのかって、事。」
彼岸花は詳しくないので解らないが、気になるのは一つの本丸に具現化された刀剣男士が二人もいていいのか、という事である。
居てもいいならこの質問は全くの無駄なのだが、色々と気まずくなったりはしないのだろうか。
「そ、それは……………あれです。なんとか説得して…」
「それは、どっちの加州を?」
「う…………………………………な、なんでそんないじわるなことしかいわないんですかっ!やっぱりぼくのことおこってるんですか!?」
叫んだ今剣は今にも泣き出しそうで、彼岸花は心が痛むがしかし無視してよい問題でも無いので続けた。
「怒ってないよ。だけど、大切なことだから。それに、加州清光が君の知ってる姿をしているとも限らないよ。」
彼岸花は太郎太刀の姿を思い出しながら言う。
「………ねぇ、今剣君。私もさ、前の加州さんに会いたいよ。だけど、私達も覚悟を決めておかないといけないね、って話。」
「……………そんなかるくいわないでください。ぼくにとっては、どちらの加州もたいせつな仲間なんです」
「うん。そうだろうね。」
「どうして、ひていするんですか」
今剣が鼻声で言った。彼岸花は、それに心臓を捕まれたような感覚がした。
否定することしか出来ない。