第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
彼岸花は子供のようにムッとしたまま、口を開いた。
「………何か、諭されるのって悔しいな。もう、解ったよ。話す、話します」
白旗を上げた彼岸花は、喜べばいいのか、照れればいいのか解らない気分だ。嬉しいが照れくさい。だろうか。
彼岸花が話始めると、苦笑いだった二人の顔が徐々に真面目な顔になった。
「……………そんなことがあったとは。居なくなった加州は知っていたが、成る程。主の壊れた理由はそこにあったか。」
「歌仙は知らなかったんだ」
「僕は元々、主とはあまり親しくなくてね」
「まぁ、恐いしね」
気が弱かった(笑)小娘には厳しい存在だっただろう。予想できる。
彼岸花は別に他意なく言ったのだが、歌仙はそれが気に入らなかったらしい。
再び抜刀されて獅子王がそれを止める、というお約束を見ながら彼岸花はのんびりとそう思った。
「それで、そいつって絶対にそこにいるのか?」
「いやぁ。解らないな。でも、出来ることはやらないとね」
「にっかり青江と石切丸で厳しいなら僕らの出る幕はないな。」
「石切丸さんは解るとして、もう一人の人もそんなに凄いの?」
確かご神刀じゃないんだよね。と彼岸花が付け足すと、歌仙が丁寧に教えてくれた。
「ふーん。にっかり笑った女の霊を切ったか……………まぁ、昔にはよくある話、なのかな」
彼岸花が呟いた所で、獅子王が口を開いた。
「なぁ、何か手伝える事はないのか?」
「……………うーん、気持ちは有り難いけど、歌仙さんが言った通り普通の刀じゃどうにもならないらしいね。」
「でも、それは今剣も一緒だろ」
「あ、それもそうだね。あの子、どうするつもりだろ」
「……………あの"子"?」
彼岸花の発言に歌仙が引っ掛かる。
「なんすか、歌仙さん。」
「君、もしかして今剣の歳を知らないのかい?」
「いや、まぁ。付喪神なんで最低でも百歳越えてることは知ってますよ」
「彼は僕よりも断然年上だよ。というより、全刀剣の中でも年長の部類だよ」
「…………………………………何だと?」
知りたくなかった事実。何度目か。
「因みに、俺も今剣より少し下位だぜ」
獅子王が自身を指差して言う。
「マジかよ。君、私と同じくらいかと思ってたわ」
「いや、お前は断然若いだろ。」
「今まで最年少は和泉守だったけど、今じゃ君が最年少で確定だね」