第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
「貴方達をここに連れ戻した以上、この本丸を変えるまで私は救われないんだと思う。でも、それは、貴方に責任をとってほしいとかそういう意味じゃなくて、私の個人的な意思表明ね。ーーーやってやるって、決めたから」
彼岸花が笑う顔を、一期は呆然と見ていた。
それは、別に馬鹿にしているわけではなく、寧ろその逆だ。
「……………………………」
一期は思わず言葉を発することが出来なかった。
軽いのかと思えば重く、浅いのかと思えば沼のように深い。
その思考の潔さと、強さは、逸そ聞いている此方が自分を恥じるほどだ。
「……………貴方の考えは解りました。聞かせてくれて、ありがとうございます」
一期は心から礼を言った。
その心を知れて良かった。
強くなろう。
誰のためでもなく、己と己の愛しいものの為に。
一期が去って暫くすると、部屋の襖が開かれた。
「おっ、ようやくですか。」
呟いて彼岸花が襖を見ると………
「ッゲ、歌仙さん。………と、獅子王君。」
「その反応はやはり、何処かへ行くつもりなんだね」
「え、えー?」
じっとりとした目で見てくる歌仙に、彼岸花は目線をそらして誤魔化した。
「君、結局僕らは一期と何があったのか聞いてないんだけどね」
歌仙はわざわざ一期、と限定して言った。
(まぁ、事の中心は一期さんだしな………)
「何って、別に何時もと同じ。話をしただけだよ。」
「……………それで、今日は何処へいくんだい?」
「何処って何時もと同じ。適当にその辺を見に行くだけだよ」
「………………………………………………僕としては、穏便に済ませたかったんだけどね。君がそういう態度じゃ仕方がないな」
本体を抜刀する歌仙に彼岸花がぎょっとして、それを慌てて獅子王が止めた。
「ま、まぁ、歌仙!落ち着けって」
獅子王は歌仙を止めると、彼岸花の方を見ながら、その場にしゃがみこんだ。
「なぁ、彼岸花。俺も歌仙も、他の奴等も。皆、少しはこの本丸を変えたいと思ってるんだ。出来ることは少ないけど、せめて何をするのか話してくれよ。これでも、強いんだぜ。俺達」
「……………………………知ってるよ。」
拗ねたように彼岸花は言った。
その様子に歌仙も獅子王も苦笑いする。