第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
彼岸花は畑仕事を終え、夕暮れに染まる空を見ていた。
ゆっくりと、歩く足は暗に彼岸花の憂鬱を表していた。
実は、昨日のよる帰ってきたことを彼岸花は小娘に言っていない。
小娘が気付いてるかどうかは何とも言えないが、彼方が何か言ってこない限り彼岸花も奴に干渉するのは取り敢えず止めた。
それにもしかしたら、今夜奴にとっての秘密が判明するかもしれないのだ。あせる必要はない。
因みに、一期の神隠し騒ぎも奴が知っているかどうかは不明である。
奴にとって、刀剣なんてのは所詮その程度なのだ。
「ちかづいてくー♪ぼくらデリケート♪あわいゆめをみーせて♪あーげよ♪たまーにはいいことあるかも♪」
久々に歌いながらルンルンで帰る。基本的に深くは考えない主義である。
「ごほうびにはチョコレート♪あまいゆーめをみーれたら♪それがすべーてだなんてわらーてみよう♪」
彼岸花が歌っていると後ろから笑い声が聞こえた。
振り返ると、そこにいたのは五虎退。
「あ……………ご、ごめんなさいっ!」
彼岸花が振り返ったのを怒っていると思ったのだろう。五虎退が慌てて謝ってくる。
「いやいや。怒ってる訳じゃないよ。やっぱり笑った方がいいね。君も」
「え………あ、ありがとうございます?」
「うん。あ、五虎退君って今から帰るところ?」
彼岸花が尋ねると控えめに頷かれた。
「そっか。じゃあ、一緒に帰ろうよ、ね?」
彼岸花は手を差し出して笑う。
五虎退が迷いながらも手を掴んでくれる。
それが嬉しくて彼岸花は沢山の話をした。
と言っても彼岸花の持つ記憶など少ないものなので、多くはこの本丸に来てからあった事なのだが。
「それでね、歌仙さんてばリズム感最悪なんだよ。ありゃ、ダメだね。リズム天国やったら全部マスターに助けてもらう感じだね」
マイナーなネタに五虎退は首をかしげているが、歌仙の話自体は面白いらしく、少しだけ表情が柔らかい。
「畑仕事してる時に獅子王の持ってる鵺が動き出したときは、この世の神秘を感じだね。まぁ、私達そのものがビックリマンみたいなものなんだけど」
あれは正直、心臓が止まるかと思った。
動くということは奴にも命があるのか?いや、しかしそれなら何故普段は動かない。哲学の扉を叩きかけた所で彼岸花は思考を放棄した。