第7章 第六章 夢を見るのは、生きている者だけらしい
まさか彼岸花がそう言うとは思わなかったのだろう。二人の目が丸くなる。
「おかしい、というのはどういういみですか?」
唯一、二人と違う顔で聞いてきたのは今剣。
今まで話そうとしなかった彼は、恐らく彼岸花の意見から何かを掴み取ろうとしているのだろう。真剣な表情だ。
「いや、だって、あそこに刀が捨てられ始めたのって、小娘がおかしくなってからでしょ?なら、加州がいなくなった段階では彼処に捨てられた刀はいないはずだよ。」
小娘が壊れた原因は加州。それなら、彼がいた段階で小娘がそんな行動をとるのはおかしい。
こんのすけの話によれば、元は気弱なはずだし。
彼岸花はあっさりと言った。だが、その言葉を聞いた瞬間、今剣はガッカリした様で、乗り出していた体を元に戻した。
「いや、それがそうでもないんだ。」
彼岸花が今剣の態度にこんわくしていると、石切丸が言葉を発してくれた。
彼は、困ったような顔で続ける。
「実は、彼処には元から刀が捨てられていたんだ。」
「え、元からって小娘がくるまえから?」
石切丸が頷く。
「そう。主が来る前から彼処には刀があった。つまり、考えればわかるけど、前の主が捨てたって事だよねぇ」
青江がそのもったりとした口調で言う。
彼岸花はその言葉に内心密かに息をのんだ。
(前の主、って事は太郎太刀が言ってた狂ったやつか)
確かに、刀剣を改造するような奴である。刀を捨てるくらいはしそうだ。
彼岸花が考えていると、今剣が言葉を発した。
「ん?」
だが、それはよく聞き取れなかったので、彼岸花は聞き返した。
「………加州は、あるじさまのことをすごくすごくだいじにしていたんです。だから、ぜったいにみすてたなんてことはないんです。このあたりはもうみんなでさがしました。あとは、あそこだけなんです。かって
だとはおもっています。しゃざいならどれだけでもします。だから………いっしょにさがしてください………!」
今剣は必死に続けた。
彼岸花はその言葉に少しだけ頭を掻いた。
「一つ気になってたんだけど、君は、加州清光の行方を知らないの?」
彼岸花が一番聞きたかったのはここである。
こんのすけは今剣なら知っているかもしれないと言っていた。密かにどころかそれを最も知りたかったのだが………