• テキストサイズ

〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム


神域の中で、時間が飛ぶように過ぎていく。
幾度となく過ぎていく夜が、一期の中の何かを削っていく。
何度か意識を失う事を繰り返して、一期は遂に自分がおかしいことに気が付いた。
弟達は、同じ時間を過ごしているはずなのに、何も言いはしない。それは、もしかしなくても……………。
(私もまた、守られているのか)
気付かない振りをする弟達を、愛しいと思う一方で、何故か涙が出そうなほど恐いと思った。
もういい、と言えればいいのに。………………………なんだって?もう、いい?
一期は、唾を飲んだ。何だ?今、何に気付いた?いけないと、思う一方でそれを追求しようとする自分がいる。
弟達と共に生きる為に、ここに来たはずなのに。
ここには、なんの不幸も無いはずなのに。どうして、どうしてこんなにも……………苦しい?教えてくれ。お願いだから、もう、考えたくない。
……………。
(………?今、何を考えていた?)
何だっただろう。
まぁ、いい。
何度目の放棄。その繰り返しに、気が付いていない時点で、彼は既に壊れていた。
何もかもを投げ出して、妙な空虚に心を支配されながら空を見ると、もう何度目かの夜。
(おかしい。もうそろそろ、朝が来るはずなのに)
何か、異変が起こっている?……………ならば、止めないと。
刀を持って立ち上がれば、遊んでいた弟達が此方を見た。
「一兄?」
「少し、ここを離れるよ。待っていてくれ」
柔らかく微笑んだ顔は、昔と同じ笑顔だろうか。見えないから、解りやしない。
踵を返して花畑の中を歩く。
異変の元凶はこの先にいる。


ゆっくりと歩く足は迷うことなくその人物に出会った。
「………よう。」
軽く手を掲げて、血だらけのそいつは笑う。ーーーあのときの様に。
「………………貴方は、誰ですか」
「彼岸花。覚えておけ。」
彼岸花。そう名乗る少女は、真っ直ぐに一期を見る。
血塗れのそいつの足元に、黒い墨のようなものが広がっている。
かなり接戦だったのだろう。余裕のよの字もない少女は、傷だらけで足も震えているけれど、目を逸らすことだけはなく、じっと一期を見ている。
オレンジ色の瞳が、一期の琥珀色すらも飲み込んで、何故か酷く心がざわついた。

「一期一振、私は、私の誇りの為にここに居る。今度こそ、話を聞いてもらおうか」

朝はまだ、来ない。
/ 281ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp