第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
「……………自由?お前、何いってんだ。」
彼岸花はその三日月の浮かぶ目をみて、呟いた。
「そのままの意味だ。一期一振は兄として、今度こそ自由に弟達を愛せる。それの、何がいけない。」
「いけないに決まってるだろ!!」
「!」
彼岸花が強く否定すると、三日月の目が丸くなる。
それは、彼岸花の口調には迷いが一切無かったからだ。
(迷うことなく言い切るか………)
面白い。ならば、なんと言うのか。
「自由なんてものは、逃げたさ先にあるものじゃない。」「だが、それはここに居ても同じだ。」
「同じじゃない。ここは、現実だ。辛くても、苦しくても、ここは悪夢の中なんかじゃない。現実を変えられない人に、その先なんて、ないんだよ………!!」
拳を握る彼岸花を、三日月宗近は冷めた目で見ていた。
「そこまで言うか。小娘、ならば、どうする?最早、俺達の声ですらあの中には届きやしない。」
何もしないなら、偉そうなことを言うな。三日月は付け足して、彼岸花を見た。
彼岸花は、時空の歪みを見る。
どうするか、そんなこと等の昔に決まっている。
ふと気がつくと、庭にいる全員の視線が此方に向いていた。誰もが、彼岸花の選択を見ている。
彼岸花は何を考える前に走り出す。
恐怖が頭を横切る前に、彼岸花は時空の歪みへと身を投げた。
「っな!!彼岸花様!」
こんのすけの声や、心配する声が後ろから聞こえる。もしここが最後だとしても、それを聞けてよかった。
心配してくれる人が居ることは、本当に、幸福なことだと思う。