第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
刀を積んで、その上に立つ。
「これなら、いけるかな」
彼岸花は呟いた。
背後からはまだ話す声が聞こえる。
それを全て無視して、彼岸花は金網に刀を向けた。
切り刻まれて落ちていく金網達。
それを見ることもなく、彼岸花は地面に手をかけて上にのぼった。
切れた掌がジクジクと痛むが、それを無視して走り出す。
とにかく、急がないと。嫌な予感がする。
間に合ってくれ。何に、かは言わないが、終わってしまっては困るのだ。
彼岸花が屋敷に帰ってきたとき、話し声が聞こえてきたのは庭からだった。
急いで庭に回ると、刀剣達が集まっている。
彼等は皆、一つの方向に目を向けており、彼岸花が恐る恐るそちらへ顔を向けると、そこには…………………………………時空の歪みが出来ていた。
「………………こんのすけっ!」
見知ったシルエットに話しかける。
こんのすけが瞬時に振り返ると、彼は彼岸花の帰りを喜んでくれた。
「彼岸花様!!ご無事だったんですね!!よかった………本当に、良かった」
駆け寄ってくるこんのすけに続いて、獅子王や歌仙、燭台切達も走ってくる。
「お前、よかった。無事だったんだな!心配したぜ、全く………」
「それにしても、どうして戻ってきたんだい。そのまま、逃げればよかったのに」
「ちょっと、歌仙さん!」
燭台切が歌仙を咎めるが、彼岸花は首を振って時空の歪みに目を向けた。
「どうして?決まってるだろ、見捨てて逃げられるか。………それで、これは、どういう状況?あの歪みは?」
彼岸花が早口で尋ねると、太郎太刀が何時もより険しい顔で歪みを見た。
「あれは、一期一振が生み出した歪みです。彼は、あの中に兄弟達を連れて、隠れてしまった………つまり、神隠しをしたのですよ」
「神隠し………!?そんな、なんで」
彼岸花は呆然と呟く。
間に合わなかった………。
(いや、まだだ………まだ)
彼岸花は歪みを見つめる。あの先に、まだ、彼等はいる。
彼岸花が拳を握った時、声が掛けられた。
「小娘。一期一振はな、これで自由になったんだ」
掛けられた言葉を理解すると同時、彼岸花は怒りを顔に表して振り返った。
「み、三日月宗近!!」
こんのすけの言葉を聞きながら、その男の瞳をみる。
その、三日月が浮かんだ瞳を。