• テキストサイズ

〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム


ーーー泣きながら帰ってきた弟に、何を言えれば兄として合格だったのか。

「前田!!」
「や、薬研兄さん」
駆け寄ってきた兄の姿に、前田は呟いた。
「大丈夫だったか!?」
心配してくれるその顔に嘘はない。
だから、今まで言えなかった。
「………………薬研兄さん」
「ん?どうした」
「主君は、何処に?」
「……………自分の部屋に戻ったぜ。もう、しらけたからって。どうして、そんなことを聞く?」
「………このままじゃ、主君は僕達を折ってしまいます。」
「………前田、あの女に会ったのか?」
薬研が尋ねてくる。前田は首を振った。
「いいえ。これは、僕がそう思ったんです。このままじゃ、いけないと」
前田が言うと同時に、何処からか兄弟達の声がする。顔をあげると、薬研の後ろに兄弟達が立っていた。………一期もいる。
「……………いけない、って。何がいけないんだ。逸そ、このまま苦しむくらいなら………」
終わればいいだろ。そう、薬研は続けた。
「薬研!!」
気付いたとき、前田は初めて兄弟を殴っていた。
薬研が驚いたような顔で、此方を見る。
「前田………!」
「いくら、兄弟でも。そんなこと、言わせません。僕は、まだ……………」
「前田……………まだ、『なんだ』?そこ、大事だぜ。それが言えない奴に、譲ることは出来ねぇな」
薬研が怒るでもなく問い掛けてくる。
だけど、その問いは前田にとって難しい問題だった。
(僕は……………)
生きたいのか、死にいたのか。
死にたくはない。だけど、それは、どうして?
死にたくないから。確かにそうだが、そんな答えで良いのだろうか。誰よりも、自分として。

「僕は……………まだ、一緒に居たいんです」

兄弟達と。続けたら、涙がこぼれてきた。
このまま終わりだなんて、嫌だ。終わったらもう、兄弟にも誰にも、会えない。
どんな罪を犯したって、ここに帰ってきたい。そう思ったから、あの刀をすててきた。
最低だと、呟きながらも。
前田がそう言って、薬研を見ていると、薬研の顔が悲しみにそまった。
こんな顔をさせたい訳じゃない。だけど、一緒に居たいから諦めて欲しくなかった。薬研に、終わってもいいだなんて言われたくなかった。
「前田、俺っちは………」
続く言葉を前田が待っていると、聞こえてきたのは足音。
見ると、自分と薬研の間に割り込んだ影があった。
臆病な兄弟は、強い目をしていた。
/ 281ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp