第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
「お、おう…………ホラー」
彼岸花が手をついていたのは、刀。ついでに言うと、倒れていたのも刀の上。
暗闇に目が慣れてくると、辺り一面が刀達にかこまれていることに気がついた。
右を見ても左を見ても刀。刀が溢れかえっている。
(成る程、ゴミ箱というわけか)
言葉には出さないが、予想することは容易であった。
泣いていた前田という短刀の気持ちも解る。
個人的には皆がみんな、あの薬研藤四郎みたいな感じじゃないことにホッとしていたが、そんなことを言っている場合じゃない。
(もう一度、具現化出来たってことは、契約じたいは切れてないのかな………)
それなら、本丸に戻れば何とかなりそうである。
「問題は、どうやってここを出るかだけど………なんか、いい方法知ってる?」
彼岸花は振り返って、先程から聞こえる声に問いかける。
彼岸花が、話しかけるとざわめきはピタリと止んだ。
この声の主が、ただの人間や刀剣じゃない事はもう解っている。
「陰口を叩く事は出来ても、まともな会話は出来ないって?随分といい性格してますね」
煽ってみるが反応はなし。
彼岸花は、諦めて上を見た。
金網に隙間が見えはするが、彼処から抜け出すのは不可能だろう。ならば、切るか。………取り敢えず、それならあそこまで手を届く様にしないといけない。
(………刀を積むか)
静かにそう思う。慈悲も同情もない。
早く戻らないと、恐らく今度こそ大変な事になる。
あの小娘に何があったのかは解らないが、勝手に終わらされるのは御免だ。命は、そんなに安いものじゃない。
「……………………………………よしっ」
彼岸花は静かに決意すると、部屋のはしまで移動し、刀を積み始めた。
刀を積み始めると、再び聞こえ出す声。
『……………………』
『……………………』
『……………………』
生声というよりは、スピーカーを通した様な声だ。はっきりと聞き取れる訳じゃないが、不思議と耳に残る。
彼岸花は、無視して作業を続ける。陰口くらいなら、もう慣れっこだ。気にしていたら世の中生きてなんていけない。
それに、何を言われようとも彼岸花には彼岸花だけが理解できる誇りがある。
この思いがあれば、それ以上なにもいらない。そう思えるから、大丈夫。
彼岸花は、空を見上げた。
金網越しに、星が瞬く。