第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
気持ち悪いと、何時ものように呟く。
何もかもが黒ずんで、吐き気がする。
政府は屑だ。あの男は特に。
(私の嫌がる顔を見て楽しんでやがる)
考えれば考えるほどに、腹が立った。
いい加減にしろ。どうして、どいつもこいつも……………調子に乗ることしか出来ないんだ。
思えば思うほど、腹が立つ。
そして、同時に虚しくなった。
(やっぱり。あんなもの、求めるんじゃなかった………)
求めなければ、こんな思いをすることなど無かったのに。どうして…………!
審神者なんて、やりたくなかった。こんな、虚しい気持ちを味わうくらいなら、全部壊してしまえば良かった。
(あぁ。いや、それなら今からでも間に合うか)
そうだ。奴は、最低限の仕事はしろと言った。
なら、壊してやればいい。どうせ、何もない未来だ。先なんて、無くていい。
壊して、奴に言ってやればいい。
『ざまぁみろ』と。
止まっていた足を、再び動かす。
だいっきらい。政府も刀剣も、誰もかれも。未来も過去も、いらない。欲しくなんてない。
過去がつぶれるなら、潰れてしまえばいい。未来なんて、真っ黒にでもなればいい。
幸福がほしいんじゃない。金が欲しいんじゃない。欲しかったのはたった一つ。
ーーー裏切らない存在が欲しいんでしょ。俺と一緒
記憶の奥で、だいっきらいな声がする。
(…………………………………うそつけ)
ほしくなんかない。だから、もう、かかわらないで。
本丸の門を開ける。
玄関先に、刀剣を一人発見する。
自分を見て怯えたような目をするそいつに、命令する。
「屋敷中の奴を座敷に集めろ。」
肩を揺らして、震えるそいつに持っていた傘を投げつけた。
「早くしろよ。今日は容赦しねぇ」
終わればいい。こんな、世界。
そう思ったから、決めた。
走っていく刀剣。
(長谷部、馬鹿なやつ。)
これから折られるなんて、夢にも思っていないのだろう。そういうものだ。どいつもこいつも、今日が終わりだなんて思いやしない。
例え、それが死刑台の前に立たされる愚者であったとしてもだ。
最後の瞬間まで、光を求める。そういうもんなのだ。心というやつは。
それを、粉々に踏み潰してやる。喜べよ、これで終わりなんだ。
地獄の明日より、その方がいいだろう?少女は、笑う。
その足は、座敷に向いて、彼女は空を見た。