第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
子供のすすり泣く声が聞こえる。
その声に、青年の足は自然とそちらへ向かっていた。
木に布が引っ掛からないよう気を付けながら、歩くと暫くして開けた空間に出た。
高台になっているそこは、池が一望できるようになっていて一瞬そちらに目が向いたが、直ぐに手前の少年に向いた。
少年は、青年のよく知る子供だった。
「五虎退か。こんなところで、何をしている?」
「………………や、山姥切さん」
涙で濡れた顔を上げる五虎退。少し怯えたような呼ばれ方は何時も通りで、山姥切は少し迷った。
生憎と、泣いている子供の対処など知らないので、山姥切にはどうすることも出来ないと思ったのだ。
だが、ここで置いていくのも気が引けるし、何よりそれをしたとなると後が面倒だ。
(………話を聞くくらいは出来るか)
ゆっくりと、五虎退の横に腰掛ける。
「何があったんだ」
無愛想に、聞けば五虎退は一瞬目を丸くした。
らしくないと、突っ込まれるかとも思ったが、五虎退は口を開かなかった。
「………………写しの俺に話すのは不満か」
「い、いえっ!その、あの………ご迷惑じゃないですか?」
「構わない。話しかけたのは俺だ。」
「……………実は、その、喧嘩をしてしまったんです。愛染君と」
「愛染と?珍しいな」
これには素直に驚いた。愛染は決して我が儘な短刀じゃないし、五虎退も同様であったからだ。
二人とも、喧嘩をする前に立ち止まるような正確なので、一体何故喧嘩になってしまったのだろう。
(いや、一つだけあるか………)
理由になりそうな出来事。
「は、はい。その、愛染君が新しく来た刀の人と一緒にいたので、僕らでどうしてか聞きに言ったんです」
「複数で行ったのか」
「え、あ、は、はいっ。あの、最初は喧嘩をしようと思ったんじゃないんです。その、途中から兄弟達と言い合いになっただけで………数で押そうとした訳じゃ………」
「あぁ。それは解っている。悪いな妙な言い方になった。」
山姥切が言いたかったのは、兄弟と行ったのなら納得、と言うことだ。
恐らく主に言い合っていたのは、藤四郎兄弟の誰かで、五虎退はそれを見ていた様な感じだったのだろう。
そこまで解れば、あとは察する事が出来る。
「それで、どういった流れで喧嘩になったんだ?」
五虎退を恐がらせない様に、出来るだけ柔らかい声で尋ねる。
五虎退が口を開く。