第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
あまりにも少女が明るい顔で写っているので、解らなかった。
(こんな顔も出来る………いや、出来たのか)
彼岸花は、徐々に歳を重ねる程暗くなる小娘の表情に、物悲しい気分を味わった。
「こんのすけー!写真見っけた」
一通り見終わってから、こんのすけに伝える。
箪笥を漁っていたこんのすけは、目ぼしいものが無かったのか直ぐに振り返った。
「写真!それは、良いものですね!!」
「だろ。まぁ、ゆっくり見なよ」
そう言って彼岸花は、こんのすけに写真を渡した。
それから、自分は机の物色に戻る。
一番上の引き出しを開けて、中を漁る。机の中の宝石箱を取り出そうとして、彼岸花は気がついた。
………………………気が付いてしまった。
机の横の屑籠。その中に、見覚えのあるオレンジ色があったのだ。
「…………………………」
心の奥が冷えるのを、感じる。
これ以上無いくらいの、軽蔑。いや、押し付けたのは彼岸花なのだが。
それでも、ショックだった。
自分の物をあげたのに、それを捨てられる。
現金なものだが、裏切られた気分だった。
(いらないなら、そう言えばいいのに。)
心の中の呟き。それを、押し殺して彼岸花は屑籠から目を逸らした。
少し乱暴に宝石箱を取り出す。机の上に置くと、中を開けた。
(………………変なものはないか)
ただの宝石である。
彼岸花の目的は情報であって泥棒ではないので、宝石箱を閉じた。
一番上の引き出しを更に漁るが、手懸かりになりそうなものはない。
(結局、得られた情報は書類と写真だけか)
息を吐いて、彼岸花は他の場所のガサ入れを開始した。
「結局、目ぼしいものは少なかったね。」
彼岸花は、呟いた。
「そうですね。一先ず、出ますか。無駄に長居するのもいけません」
「そうだね。取り敢えず、出ようか。」
彼岸花は、言ってこんのすけと共に小娘の部屋を出た。
時刻は現在、午後一時過ぎ。結構時間は経ってしまっていた。
「それで、このあとはどうしますか?」
こんのすけが尋ねてくる。彼岸花は、決めていた事があるので、それを話した。
「それでは、倉の本棚を見に行くのですね」
「うん。一応ね。色々と気になるし」
「ならば、お供します!」
「おお!こんのすけがお供に昇格した!」
「私の方が下ですか」
「不満?」
「いえ」