第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
こんのすけは、やや迷ってからしかし頷いた。
「………少なくとも、政府はそう考えているようです。」
「………そっか。」
「ですが、あの方は優しい心の持ち主でした。決して、決して、不良品等ではごさいません………!!」
静かながらしかし譲らぬ意思をもってこんのすけが否定する。彼岸花は、それに頷き返した。
「解ってるよ。大丈夫、もしもの時の為に絆創膏を用意するような人だからね。優しい人だったんだろうよ。」
彼岸花がそう言えば、こんのすけは嬉しそうに彼岸花を見る。こんのすけにとっては、大切な仲間だったのだ。……………そして、小娘にとっても。
手元の紙束を見る。
不良品保護、というタイトルから察するに恐らくこの中には回収された加州清光についての情報があるのだろう。
それをわざわざ今でも取っておいているのだ。多分、きっと、小娘も待っているのであろう。大切な仲間の帰りを。
しかし、死んだものはもう、生き返らない。それは、どうしようもない事実で、現実。だから、彼岸花はせめて何か、小娘と通じあう術を探した。
小娘は確かに最低なやつだ。それもまた、事実である。
だけど、彼岸花はそれでも、小娘が居る状態でこの本丸を立て直したい。
そう、思ってしまう。
箪笥を漁るこんのすけの背中を見る。こんのすけは、小娘に呪いをかけられた。それでも、小娘を主様と呼ぶ。
こんのすけにとっても、主様は小娘しかいない。その事実が今、彼岸花の心を、何故か締め付ける。
(私は、小娘のことを何も知らないんだな)
小娘がした酷いことも、優しいことも、何も知らないから、好きなのか嫌いなのかも解らない。
それは大切な問題だ。彼岸花自身が小娘をどう思っているのか。
主とも呼べない彼岸花は、それなら小娘の何なのか。
彼岸花の、思考は続く。
紙束を机に戻した彼岸花は、一先ずその上の段を開けることにした。
(…………………)
上の段には、封筒が一つ入っているだけだった。
仕方が無いのでそれを、取り出して中身を掌に出す。
出てきたのは、写真の束。
カラー写真であるそれらには、小さな女の子が写っている。
しばらく写真を順番に見ていって、彼岸花は気付いた。この女の子は、小娘だ。
いや、冷静に考えれば見知らぬ少女の写真があるはず無いのだが………。