第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
下から開けるのが空き巣の基本なのだと、前に本で読んだので、その知識に従い下から開ける。
一番したには書類の束が丁寧に仕舞われていた。
それらの一つを手に取り、パラパラと読む。
どれも似たような内容だが、小娘は全部取っているのだろうか。
(その割りには、別に重要な内容じゃないんだよなぁ。)
意味の無いように見える書類達だが、何故取っているのだろう。
まぁ、彼岸花にとっては大事じゃなくとも、小娘にとっては大事なのかもしれない。解らないなら、一先ず置いておこう。
そう思いながら紙束を仕舞う。次は、隣の束だ。
彼岸花は次の紙束を取り出して、息を飲む。それは、紙束が読めないように綴じてあったからだ。
ただ綴じてあっただけなら、息を飲む事はなかっただろう。彼岸花が驚いたのは、その綴じ方が見覚えのあるものだったからだ。
(この綴じ方………地下書庫のファイル………)
そう、あの前審神者のファイルだ。
(あのとき、綴じてあった中には………)
確か、歴史修正主義者の亜種について載っていたはずだ。小娘の紙束には何が書いてあるのやら。
例の袋とじ攻略方で上から覗き込む。
(加、州………加州?)
読み始めて二文字。彼岸花は、既に悟った。先に続く言葉は、予想通り。
ーーー加州清光
脳内でその名を繰り返す。
(………加州清光、不良品保護?)
「不良品保護?」
気付いたとき、彼岸花はその言葉を繰り返していた。それくらいに、意味が解らなかった。
繰り返して、喉の奥で言葉を反響させても解らない。
難しくて解らない、という意味では当然ない。彼岸花が解らないというのは、あまりにも酷すぎて、という意味だ。
「彼岸花様?どうなさいましたか」
彼岸花の呟きに箪笥を漁っていたこんのすけが、振り返る。彼岸花はその言葉を聞いた。
「不良品保護、ってどういうこと?」
少しきつい口調に成りながら、彼岸花はこんのすけを見る。
こんのすけは彼岸花の持つ紙束を見て、ある程度察した様だ。
「不良品というのは、言葉通り。他の個体より劣る個体の事です。」
「……………それは、例えはばどんな?」
「………主様の命に従わなかったり、勝手な行動に出たり、ですね。」
「それはこの本丸の初期刀も含むの?」
彼岸花は尋ねる。その目に怒気を滲ませて。